円高問題へ日銀が示した量的緩和、フロントランナー・白川総裁の真意

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円高問題へ日銀が示した量的緩和、フロントランナー・白川総裁の真意

10月5日、定例会見に臨んだ日銀の白川方明総裁は、明らかに従来とは違っていた。眉間に皺を寄せて、一見、不機嫌そうにするようないつもの表情はなく、明るかった。新たな金融緩和策に関連して「従来、量的緩和に慎重だったが…」という質問には、「そういう質問が出ると思って答えを用意していた」と笑顔を浮かべるほど。サービス精神にあふれていた。

しかも、口にする言葉もいつもの堅い「白川流」ではなかった。それとは180度異なる、曖昧さを持ち味にした前任の福井俊彦総裁の言語に近かったと言ってもよい。その象徴が「フロントランナーとして」という表現だ。同様の言葉を発したのは福井前総裁であり、当時、日銀当座預金残高をターゲットとする量的緩和策を強化するに先立って、同前総裁がことさら活用したのが「フロントランナーとして」という言い回しだった。

しかし、同じ言葉を活用しながら、二人の総裁が踏み切った量的緩和策は大いに異なる。福井流の量的緩和は「実質的な効果は乏しく、実体経済が自立的に回復することを待つ」政策だったのに対して、今回、白川総裁が打ち出した金融緩和策は「市場価格などに確実に影響するもの」だからだ。

白川総裁は従来、量的緩和は意味がないと否定的だった。その効果が期待できなかったからであり、その意味では、今回、白川総裁自らが踏み切った政策は「効果がある」ことになる。白川総裁の明るさもついに「やることをやった」という明るさだったとも言える。

白川総裁が「包括緩和」とした今回の金融緩和策は日銀のバランスシート上に基金を設置して、その基金を通じて、国債、ETF(上場投資信託)、不動産投資信託などを購入する。このうち、国債購入を残存期間2年以下としているのには明確な狙いがある。銀行が企業に対して実行している長期貸し出し(期間3年)金利の引き下げを促すために、デュレーション(債券の実質上の残存期間)が近い国債金利を押し下げるということだ。

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