マタハラ被害者を叩く、日本の「現状」を考える 最高裁判決で“空気”は変わるか?

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そもそも、法律を守ったら潰れるような事業は、継続するほうが経済合理性に欠けています。理想や目指す方向と現実にギャップがあるとき、どうしたら理想に近づけるかを考えず、現状追認を続けていたら、労働者は長期的には自分の首を絞めることになります。

今、マタハラ被害者をバッシングしている人も、近い将来、自分自身が病気療養のために、また、親の介護のために、有給休暇を消化したり、休暇制度を使ったりする可能性があります。今は「強者」のあなたも、近い将来、周囲の助けを借りないと働けなくなるかもしれない。バッシングする側の論理を積み重ねた先に出来上がる労働慣行は、きっとブーメランのようになってはね返ってくるでしょう。ほとんどの人は、一生強者ではいられないのですから。

本来ならば、労働局雇用均等室が動くべき

今回は最高裁判所が判決を出しましたが、このような事件は、本来なら、労働局の雇用均等室がきちんと介入すべきなのです。

別の事例をご紹介します。妊娠解雇に遭ったBさんです。Bさんは労働局にマタハラ被害を相談した際、会社側の味方をするような対応をされたといいます。Bさんと会社の間で退職条件が合わないと聞いた労働局は、Bさんのほうに会社側に歩み寄るよう勧めたのです。

「(労働局の)担当者はこれを『譲り合い』と表現しました。とても驚き、傷つきました。また『解雇は無効と考えていない』という発言にも驚きました。

労働局は私の(裁判での会社側への)請求額が高いなどといったことは判断できるくせに、会社側の対応が違法であるとの判断はできないと言います。労働者の味方をしない労働局。こんなお粗末な対応なら、二度と産まないと思ったほどです。これまでを振り返っても、労働局に相談していた時期がいちばんつらかったです」

被害者たたきの風潮と同様に、マタハラ被害への対応について、方向性を間違っているように見える労働行政。海外に目を転じると、本来、あるべき方向性として、お手本になりそうな機関に、アメリカのEEOC(Equal Employment Opportunity Commission: 雇用機会均等委員会)があります。人種、性別、宗教などに基づく雇用差別をなくすための行政機関で、1965年に設置されました。

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