マタハラ被害者を叩く、日本の「現状」を考える 最高裁判決で“空気”は変わるか?
「(マタハラ被害者への)批判や罵倒が減りました」
と話すのはマタハラNetブログ管理人で自身もマタハラ被害にあったAさん。マタハラNetは、正式名称「マタニティハラスメント対策ネットワーク」と言います。
マタハラNetブログには、体験談やQ&Aなど関連情報が集められています。たとえば連日夜遅くに及ぶ勤務の中、流産した女性に対し、上司が「(仕事に)戻ってくるなら、(今後は)妊娠9割あきらめろ」と言った例など、数多くの体験談や「弁護士の見つけ方」といった対策が書かれています。
マタハラNet代表の小酒部(おさかべ)さやかさんは、名前を出してメディアの取材に応じ、自身の体験を語ることで、実態を広く知らせてきました。一方、Aさんは名前を伏せた形で活動し、ブログの管理などを行っています。Aさんによると、これまで、ブログには応援メッセージだけでなく、批判や中傷も多数寄せられたそうです。
筆者もそうした批判メールを見せてもらいました。特に驚いたのは、育児休業から復帰したばかりという27歳女性からのメールです。
「……(自分は)自らの努力もあって、今の立場を得ています。出産に対して理解のある企業に入り、そこで実績を挙げたからこそ、必要とされているのです。そうした企業に入る努力もせず、女性であることを利用して権利ばかりを主張するのは、同じ女性として恥ずかしいかぎりです」という文面に、本当に残念な気持ちになりました。
メール主と同様に、子どもを育てながら働く女性であり、職場環境や上司に恵まれた経験を持つ筆者は、同じ言葉をそのまま書き手に返したい、と思います。あなたがそういう環境にいるのは、本当に能力と努力だけのおかげなのか? 同じ会社の先輩女性たちが頑張ったおかげで職場環境が変わり、制度が整ってきたのではないか? 同僚や上司はあなたの仕事をまったくカバーしていないと思っているの? 恥ずかしいのは、あなたのような考え方ですよ、と。
違法行為<根性論で考えている?
マタハラ被害者をたたく人のコメントを見ていると、知識不足や人権感覚の欠如を感じます。たとえば「契約社員はいつ切られてもおかしくないのでは」とか、「自分から業務軽減を申し出たのだから、降格されても仕方ない」といった反応からは、働く人の権利を保障する法律の知識を知らないか、知っていても現実に適用する必要はない、と考える人が多いことがわかります。
思い出すのは、従業員に長時間労働を強いたり有給休暇を取らせなかったりした、「たかの友梨ビューティクリニック」の労務管理問題です。NHKのニュースで、たかの友梨氏のものとされる、次のような発言が、音声データとして報道されました。
「労働基準法にぴったりそろったら、(会社は)絶対成り立たない」
「潰れるよ、うち。それで困らない?」
マタハラ被害者へのバッシングも、この発言も、違法行為を当然と受け止める発想が共通しています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら