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日本では物価もインフレもさほど重要ではない

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  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
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新型コロナウイルスである。コロナショックで、人々もパニックになったが、政府も中央銀行もパニックになり、大規模金融緩和、大規模財政出動をしたために、むしろ景気が過熱してしまった。

そして、コロナが一時的に落ち着き、コロナの第1波、第2波と人々は慣れていき、コロナ波が来ても人々は気にしないようになり、消費は活発になった。需要が急増したのである。

一方、供給にも問題が生じた。生産現場で、コロナ感染リスクから生産ラインがストップするところが続出した。また、オンライン会議や自宅勤務の広がりで、IT需要の急増から半導体などが不足した。

そして、これとは独立に、エネルギー価格が急騰した。脱炭素の過度の流行で、石油・天然ガスの開発が中止されたが、代替エネルギーの開発はそれほど進まず、炭素系の資源が恒常的に不足するようになり、インフレが進むという、いわゆるグリーンフレーションとなった。

これと同様のことが半導体などの部品、ほかの資源にも及んでいる。なぜなら、コロナショックで景気が急激に冷え込み、需要不足となると多くの生産者が予想し、あるいは景気悪化で生き残りを優先して、投資を一斉に控えたのに、需要が予想とは正反対に急増したことで、構造的な供給不足となってしまい、短期では対応できなくなってしまったのである。

コロナショックで早くから供給不足を予想した渡辺教授

つまり、現在の急激なインフレは一時的ではなく、その意味でFEDは致命的な判断ミスを犯したのだが、それは世の中のほとんどすべての人が景気の冷え込み、インフレではなくデフレを予想したのだから、仕方がないともいえるかもしれない。

しかし、渡辺教授はただ一人、2020年の春、コロナショックが起きたときにインフレを予想し、それを懸念したのである。この「事件」も、渡辺教授のこの本の執筆動機になったようであるが、それにしても慧眼である。

彼の予想は、需要のほうは、例えば焼き肉の外食需要は減っても、その代わりに自宅で焼き肉をすると予想し、消費需要のほうは、形は変わるが総量は変わらない。一方、供給のほうは、職場に通勤することが難しくなり、生産は減少し、供給にボトルネックが生じ、供給不足が生じると予想したのである。

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【なぜ日本だけがインフレになりにくいのか】

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