日本では物価もインフレもさほど重要ではない なぜ異次元緩和までしてインフレを起こすのか

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競馬である。

2月20日は今年最初のG1、ダートマイルのフェブラリーステークス(東京競馬場 第11レース)である。今の競馬ファンには信じられないだろうが、われわれが熱中していたころには、JRAではダートのG1は存在しなかった。

芝からダートに転向してから、重賞を勝ちまくり、最後はドバイで散ったホクトベガ(個人的には人生で最も心を痛めたレースである)が、フェブラリーSを勝った時はまだG2で、翌年1997年からG1に格上げされた。そして、ホクトベガを最後に牝馬は勝っていない。

つまり、フェブラリーS・G1では牝馬は勝てないのである。そこに、アイドルホース、ソダシちゃん(6枠11番)が参戦する。

調教師の使い方や騎手の乗り方について、プロフェッショナルに敬意を表して、素人の私はいっさい批判をしないようにしているが、ソダシをダート戦に出走させるのは不思議ではある。

札幌記念を強い相手に完勝し、負けたオークス、秋華賞はそれぞれはっきりした敗因があったから、芝から逃げ出す理由はないはずだ。それなのに、昨年12月のチャンピオンズカップ、今回のフェブラリーSと、ダートを連戦させる。なぜなのだろう?

1つ考えられるのは、ソダシはすでにG1を2つ勝っているため、G2以下の重賞はハンデ戦か別定戦で、重い斤量を背負わされることになるので、定量戦を狙うとG1になってしまい、冬の適当なマイルあたりのG1はこのダート2つしかない、ということかもしれない。

さらに、ダートを一度試したいという調教師の言葉があるが、試すのなら、斤量が有利な若いうちに、3歳のうちに試しておきたかった、ということなのかもしれない。

この数年、日本でも世界でも、芝の大レースで牝馬の活躍が目立っているが、日本の場合、牝馬は牡馬に対して2キロ斤量が軽くなる(例えば牡馬57キロに対して牝馬55キロ)ことが1つの大きな理由といわれている。3歳牝馬がフランスの凱旋門賞で圧倒的に有利なのと同様に、日本でも、ということはあるかもしれない。

フェブラリーSでソダシを狙わない理由

しかし、ダートは違うのである。少なくともフェブラリーSでは、牝馬は勝っていない。

この理由は、やはりダートにあると思われる。ダートに強い馬は、芝馬よりも平均して大型馬が多い。芝よりもパワーが必要だからで、500キロ越えは当たり前、550キロを超える馬もざらである。

一方、芝はバランスが重要で、480キロから500キロちょっとぐらいが多い。あのディープインパクトは440キロ前後だったし、ディープの子供で走るのは小柄な馬が多い。

つまり、フェブラリーSに出てくる馬は大型なので、斤量が57キロだろうが55キロだろうが、あまり関係ない。物価も斤量も関係ない、というのが今日のオチである。

ということで、ソダシは応援するが馬券は買わない。狙うのは、東京マイルダートは芝スタートなど特殊な面もあるので、このコースに実績のある馬ということで、カフェファラオとインティ。前者は昨年の勝ち馬、後者はなんと3年前の勝ち馬である。この2頭で。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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