「FRBは株価を支えてくれる」と考えてはいけない インフレ対策に追われるアメリカの「因果応報」

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議会で証言するパウエル議長(2021年6月)。このころは「物価上昇は一時的」と何度も繰り返していたが、今となって見れば物価動向を読み間違っていた(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

長らくアメリカの経済指標を見続けてきて、これだけ絶好調の数字が続くことも珍しいと思う。

まず、2021年10~12月期のGDP(国内総生産)成長率は前期比6.9%増であった。同時期の中国経済をはるかに上回る成長で、過去をさかのぼっても1984年第4四半期以来の高さとなる。

その結果、2021年通年でのGDP成長率は5.6%増となった。ざっくり20兆ドルのアメリカ経済が年5%成長すると、それだけで1兆ドルの増加を意味する。昨年1年間で、インドネシア(世界第16位)かオランダ(世界第17位、いずれも2020年実績)と同規模の経済が新たに生まれたことになる。なんだか目の前がクラクラするぞ。

アメリカはほぼ完全雇用、40年ぶりのインフレ高進

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

次に2022年1月の雇用統計では、失業率は4.0%とコロナ前の水準に近づいている。市場が注目するNFP(非農業部門雇用者増減数)は、予想を大きく上回る46.7万人増となった。

思えば「コロナ初上陸」となった2020年4月には、NFPは単月で2050万人もの減少となり、失業率は一気に14.7%まではね上がったものだ。それから2年弱、NFPの増加分累計は1764万人となっている。

労働参加率がやや低下したこともあって、雇用情勢はほぼ回復したと言っていいだろう。今では人手不足のほうが問題となっている。コロナによる死者数がとうとう90万人を越えた一方で、アメリカ経済は過熱ぎみなのだ。

そしてこっちのほうが大問題なのだが、2月10日に発表になった1月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比7.5%となった。これで2カ月連続の7%台である。昨年来の物価上昇がいよいよ止まらない。こんな物価上昇率は1982年以来、約40年ぶりというから、忘れられて久しいインフレの季節到来である。

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