「FRBは株価を支えてくれる」と考えてはいけない インフレ対策に追われるアメリカの「因果応報」

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そのうえで、こんなことを書いている。

バイデン政権における経済政策の司令塔は、ご存じジャネット・イエレン財務長官である。連銀議長時代は、粛々と金利を上げるセントラルバンカーという印象だったが、財務長官としては旗幟鮮明なリベラルで、労働経済学専門の経済学者という地金が蘇ってきたようである。
「コロナ感染で失われた約1000万人の雇用が回復するまで、あえて強力な財政支出を継続する」と歯切れがいい。なんとなれば、国際金融危機以後のアメリカ経済は、研究開発投資の減少や労働参加率の低下など、負の履歴効果があって潜在的な供給能力が低下している。ゆえに力強い総需要と労働市場の逼迫という「高圧経済」(High-Pressure Economy)を作り出す必要がある。イエレン氏はこの持論を試す覚悟のようだ。

現在のアメリカ経済は、まさに「高圧経済」になっているのではないだろうか。インフレは、いわばその副反応ということになる。

今から考えればサマーズ氏の指摘は正しかったわけだが、バイデン政権はあえて財政政策が小さすぎるよりも、大きすぎる失敗のほうを選択した。その結果としての金融引き締めは「もって瞑(めい)すべし」であろう。

BBB法案成立は困難、FRBはインフレ退治優先の可能性

この仮説から導き出される結論は2つある。

1つはアメリカ政治の問題であって、バイデン政権が成立を目指しているBBB(ビルド・バック・ベター)法案はやはり難しい、ということだ。民主党左派が悲願とする法案で、医療、教育、育児、貧困救済などへの支出を目指している。

しかるに、インフレが進行している中での大型歳出法案の成立には無理があるだろう。3月1日に予定されている一般教書演説で、バイデン大統領がこの点をどんな風に訴えるかが気になるところである。

もう1つは、株式市場に対するものである。景気よし、雇用よしの今のアメリカ経済においては、FRBの金融引き締めには「政治的正当性」がある。パウエル氏は議長として2期目に入ったばかりだが、なかなか「ハト派」には戻れないとみるべきだろう。

インフレ退治の過程では、株価や資産価格が急落することもありうる。わが国とは違って、「家計資産の約半分が株式市場にある」といわれるのがアメリカだ。だから「そんなに無理はしないはずだ」とつい考えたくなる。ただし投資家目線でいえば、「パウエル・プット」はあんまり期待しちゃダメよ、ということになる。

(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)

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