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日本では物価もインフレもさほど重要ではない

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  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
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理由は3つある。第1に、ハイパーインフレーションおよびデフレスパイラルが恐ろしいからである。これは私ももちろん賛成である。これらは全力で回避すべきものである。

しかし、普通のインフレ、そして0~0.5%の超低インフレ(デフレとなんとなくみな呼んでいるが、それは間違いだ。あくまでインフレであり、低いだけだ)、これらはハイパーともスパイラルとも異なり、経済に致命的なダメージを与えない。まるで別物なのである。それゆえ、恐れる必要はない。それが私の意見である。

それでも、ほかの学者たちの意見は「ハイパーインフレやデフレスパイラルになるリスクをとにかく減らすことが必要で、とりわけデフレスパイラルに陥ると中央銀行としてはなすすべがなくなるから、それに陥らないように、予防的に、徹底的に低インフレを回避すべきである」ということである。

インフレ抑制が重要である理由は本質的にはただ1つ

第2の理由は、これと関連していて「2%程度のインフレが必要な理由は、中央銀行にとって便利だから」である。

金融政策を行うにあたって、マイナス金利には限界があるとすると、金利の引き上げは理論的には無限に上げられるのに対し、引き下げはゼロの限界があるので、政策金利をゼロ以下にするべき状況になったときに困る。したがって、政策的余地を残しておくために、ある程度のプラスのインフレ率であることが中央銀行にとって精神的に安心であり便利である、ということだ。

しかし、私はそれに強く反対だ。それは単に政策的な都合であり、メリットではあるが、プラス2%ぐらいあればありがたいが、といった程度のことである。

2月4日の日本経済新聞の経済教室で、プリンストン大学のマーカス・ブルネルマイヤー教授も、現在のインフレをもたらした欧米中央銀行の政策的な枠組みの見直しについて、「その目的は低インフレ環境からの脱却にあった。今となっては低インフレなどぜいたくな悩みであり、そうした政策は的外れだったといえる」と断言している。

しかし、インフレ抑制が重要である理由は、実は本質的にはただ1つ、最も基本的な話だが、庶民の生活を守ること、物価高騰で生活苦に陥らないようにすることなのである。

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【FEDが慌てふためいて政策を急転換している理由】

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