これが第3の理由であるが、これが現在、アメリカのFEDが慌てふためいて政策を急転換している理由である。選挙のため、政権から圧力がかかっているかどうかは知らないが、圧力がまったくなかったとしても、セントラルバンカーとしてはこのようなインフレは止めなければならない。
インフレが加速するかどうか、永続的か、ちょっと長めの一時的か、どうなるかについては判断が分かれる。だが、将来シナリオがどうであったとしても、今現在、インフレで苦しんでいる人々、それも相対的な低所得層がいる以上、ともかくインフレは妥当な水準に抑え込まないといけないのである。
日本がインフレになっていない僥倖に感謝すべき
ここが、日本が世界とまるで違うことである。「ガラパゴス日本」は、世界的なインフレが起きても、消費者が直面する物価の上昇が弱い。これは異常というより奇跡。そして、素晴らしいことである。
何かにつけ、政権や政策責任者をともかく攻撃したがるメディアや有識者は「インフレが起きないのは日本だけだ、それは日銀のせいだ、欧米の中央銀行を見習え」という筋の批判を繰り返すが、それはとんでもない間違いで、180度逆だ。
日銀がすばらしいからかどうかは不明であるが、ともかくインフレになっていないのだから、その僥倖に感謝すべきなのである。したがって、むしろインフレのことは日本では忘れてよいのである。だから、少なくとも日本では物価は重要でないのである。
繰り返すが、物価が重要なのは、それは庶民が直面する価格であり、それが上がると直接的に生活が貧しくなる。だから、物価上昇は抑えなくてはいけないのであり、それ以外の問題は2次的な問題にすぎない。
そんなことは誰でもわかっているはずだが、この20年間の日銀批判の世界的な高まりで、日本の世論、メディア、あるいは有識者まで、物価の基本的な問題点を忘れて、より高度な、ぜいたくな悩みで頭がいっぱいになってしまい、物価政策である金融政策はおかしなことになってしまったのである。
日本批判、日銀批判で気炎を上げすぎたせいか、欧米の経済学者もエコノミストも、そしてセントラルバンカーまでもが、日本病、ジャパナイゼーションを過度に無駄に恐れ、金融政策を失敗してしまったのである。
さて、ここからが物価のメカニズムに関する渡辺・小幡論争のはずだったのだが、すでに紙幅を使い果たしたので、続きは速やかに別のところで行おう。
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