男性に不満を持つ「韓国女性たち」の容赦ない本音 「男vs.女」バトルが激しさを増す韓国のリアル

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事件に憤った女性たちは江南駅へ押し寄せ、23歳という若さでこの世を去らざるをえなかった被害者の女性に思いを寄せた。江南駅の入り口には、女性を追悼する言葉を記した付箋紙がびっしりと貼られ、「女性を嫌悪することを止めてほしい」と訴える集会も行われた。今も続けられている韓国のフェミニズム運動は、こうやって始まったのである。

この事件が起きるまで、韓国で「フェミニズム」は一般的なものではなかった。フェミニズムについて正確に知っている人もおらず、一部の女性たちが男性と同等な権利を主張する学問分野といった程度だった。しかし、江南駅殺人事件以降、韓国の女性たちは男性優位の社会でこれ以上黙ったままではいられないと考えた。女性自ら、自分の権利を求めるために声を上げ始めたのだ。

#MeTooで高職位者が逮捕、辞任、自殺も

韓国のフェミニズムが盛り上がりを見せるもう1つのきっかけは、#MeToo運動である。その決定的なものは2018年3月、韓国中部・忠清南道の知事だった安熙正知事(当時)の秘書だったキム・ジウンさんが、安氏から8カ月にわたり性的暴行とセクハラを受けてきたと放送局で暴露したことだ。

次期大統領候補として人気も人望もあった安氏が犯した行為に多くの人たちは驚愕し、そして上の地位に立つ者が犯すセクハラというものがどのようなものなのかをようやく理解した。安氏は2019年に懲役3年6カ月の判決を受け、現在服役中だ。

この事件以降、高位公職者に対する#MeTooが相次いで起こされた。女性秘書にセクハラを受けたと訴えられた朴元淳前ソウル市長は自殺し、呉巨敦前釜山市長も釜山市役所に勤める女性公務員にセクハラをしたとされ、ようやく手に入れた市長の座から引きずり下ろされた。

これまで、性的被害を受けたにもかかわらず沈黙を強いられるほかなかった女性たちは、過去の彼女たちとは違う。過ちを犯したのは加害者であり、被害を受けた女性に過ちはない――。女性たちは堂々と生きようとしている。

こうして韓国女性が声を上げることが日常的になる中、今も活発に行われている運動がある。「脱コルセット運動」だ。

運動と言うには少し誇張した言い方になるかもしれないが、江南駅事件と#MeToo運動と同じ頃に、インターネット上の女性コミュニティを中心に広がりを見せた。従来韓国で求められていた「女性らしい」、あるいは、「女性はかわいくなければならない」といった行為をしない、という運動だ。

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