ヴァンフォーレ甲府が低予算でも結果を残せる訳 伊東純也を磨いたチーム、佐久間悟社長兼GMに聞く
今年11月からサッカー「2022 FIFAワールドカップ」が中東カタールで開催予定だ。
アジア最終予選の序盤は1勝2敗と苦戦した日本代表も、その後は5連勝。本大会出場まで手の届くところまで盛り返した。最近の試合で、立て続けに得点を奪ったのは伊東純也選手(所属:ベルギーのゲンク)だ。快速を武器にサイドを突破した姿は記憶に新しい。
今では欧州の舞台で活躍する伊東選手がプロのキャリアをスタートさせたのは、山梨県にあるヴァンフォーレ甲府だった。予算規模も小さく、大企業の支援がない地方クラブだが、選手の育成に定評があり、これまで日本代表に何人もの選手を送り込んできた。
昨年のJ2では3位(コロナ禍で入れ替え戦なし)と、上位2チームに与えられるJ1への自動昇格を惜しくも逃したが、2017年まではJ1で5年戦った。経営面も非常に手堅い。
今年で1992年の発足から30年を迎える「Jリーグ」。Jクラブの中でも、ヴァンフォーレ甲府の取り組みはユニークだ。かつては経営破綻寸前だったこともあるが、今では同リーグ創設時の理念「地域密着」を体現するクラブとなっている。
なぜ低予算のチームが伍して戦えるのか。どんな経営をしているのか。一般企業でも参考になるかもしれない。Jリーグ唯一の社長とGM(ゼネラルマネージャー)を兼任する佐久間悟氏に、組織運営の視点から聞いた。
「J1昇格を逃し、申し訳ない」
「昨シーズンにJ1昇格できなかったのは、サポーターやスポンサー、自治体といったステークホルダー(利害関係者)に申し訳ない思いです。クラブとチーム編成の最高責任者として詰めが甘かった。現状を洗い出し、関係者と共有しつつ、今季に備えています」
こう切り出した佐久間氏(運営会社:ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ代表取締役社長)は、理論家であり実務家だ。取り巻く環境や数字を具体的に示しながら話す。
もともと佐久間氏は駒澤大学を卒業後、NTT関東に社員選手として入社。入社2年目で副主将、3年目から主将を務めた。現役引退後はNTT関東→大宮アルディージャのプロ化にも携わり、コーチ、監督、強化・育成部長を歴任。当時はサラリーマン監督とも呼ばれた。
その後、海野一幸社長(当時)にヘッドハンティングされてヴァンフォーレ甲府に移り、2008年10月から現在までGMを13年以上担う。この間に監督も務め、2021年に社長に就任した。
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