ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み “中の人"が語る「なるほど」な独自性の生み出し方

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クリエイティブセンターは、ソニーグループのデザイン部門を担っている。ソニーが掲げる事業は、「ゲーム&ネットワークサービス」「音楽」「映画」「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション」「イメージング&センシング・ソリューション」「金融」の6つの領域に及ぶ。

エレクトロニクス事業はもとより、エンタテインメントや金融などを含めて幅も奥行きも広く深い。クリエイティブセンターがかかわっているのも、プロダクトのデザインに限らず、UI/UX、ブランディング、コミュニケーション、空間のディレクション、サービスなど多岐にわたっている。

デザインというと、製品の色やかたちを創り出すところととらえる人もいるだろうがそうではない。クリエイティブセンターに籍を置くデザイナーは、ユーザーとかかわる多様な領域すべてにかかわっていると言っても過言ではない。そして、ソニーとユーザーとのタッチポイントに携わるという意味では、いわゆるブランディングの一角を担う仕事であり、「らしさ」に大きく関与している。

「“ソニーらしさ”とは何でしょうか」という質問に対し、「実は内部では『らしい』『らしくない』という話をすることは、あまりないのです」と石井さん。「らしさ」について、侃々諤々の議論がなされているという筆者の読みは見事にはずれた。

デザインを洗練されたものにする「審議」

一方で、「デザインを洗練されたものにするためのディスカッションはしょっちゅうして、それを審議と言っています」とも。社内のいわば公用語として審議が使われていて、さまざまな場面で行われている。国内はもとより、世界各地のソニーでも、“SHINGI”と呼ばれている。オープンでフラットを旨としていて、役職やキャリアに関係なく意見を言い合うという。

ソニーグループクリエイティブセンター長の石井大輔さん(写真:今 祥雄)

「何かあったら『審議しよう』というのは、ソニーのデザイン文化の1つかもしれません。Review(考察)やCritique(批評)とはニュアンスが違っていて、いわば“共創”的な要素が強いのだと思います」(石井さん)

よりよくするためにどうするかをゴールに、共に創り上げていくという考えが、企業のDNAのように存在しているのだ。それとともに、人真似ではなく、独自性を追求していくことを重視してもいる。今までにないこと、ほかがやっていないことに挑戦する姿勢も、過去から脈々と受け継がれてきた気風だ。

「審議の場では、新人時代から『意見ないの?』と話を振られます」(石井さん)。新人と先輩が入り交じって、フラットな目線で意見を言い合う。開かれた環境ではあるものの、新人にとってはある意味厳しいし、先輩にとっては自分が試される場でもある。そうやって意見をぶつけ合うことで、「らしさ」が培われていくのだろう。

ただ、自由闊達と言っても、それがネガティブに出ると、「自分の意見を否定されてしまった」「上司の言うことを聞かざるをえなくなった」となってしまう。「ネガティブな意見も出ますが、言われた人は、自分の思考のもと、取捨選択してかまわない。そういう風土があるのです」。健全な話し合いだが、他者の意見を取り入れるか否かを自分で判断するということは、主体性と責任が問われるものであり、そこに物差しも必要だ。

どのようになされているのか。

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