中国が「極端な貧富の差」の中で山ほど抱える難題 国内の社会矛盾増大、習近平政権に焦燥が見える

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一方、「996」(週6日、午前9時から午後9時までかそれ以上働く)というライフスタイルや、エンドレスに非理性的な競争が加速する社会現象「内巻」に嫌気が差した若者の中には、立身出世や物質主義に関心を示さず、「躺平」(寝そべり族)になることを選ぶ者もいる。結婚しない生き方を選ぶ人、同性愛者であることを明らかにする人も増えている。2013年以降、婚姻件数は減少傾向にあり、2020年は813万1000組(前年比-12.2%)と最低記録を更新した。

不安定な食糧・エネルギーの供給

習近平政権をさらに不安にさせるのが、不安定な食糧とエネルギーの供給である。例えば、昨今の豚肉価格の乱高下が懸念事項になっている。2018年にアフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)で養豚農家の廃業が相次ぎ、一時生産量が激減、2020年は2018年比で生産量が3分の1になり、2020年末までの1年半、豚肉の枝肉価格は市場最高値レベルで推移した。

中国の欧米各国からの豚肉輸入は世界的な食肉価格の高騰も招いた。しかし、豚肉の価格高騰によって養豚企業が新規参入したため、2021年に入ると生産が増加し、価格は急落した。さらに、豚の飼養頭数が大幅に増えたことで飼料となるトウモロコシ価格が高止まりし、豚肉価格は大幅安、穀物は大幅高の状態となった。

供給不足を心配して中国が買いすぎると、世界市場の価格が上昇する。国内の生産調整も容易ではない。昨年は洪水の影響でコメも輸入拡大の傾向にあった。中国政府は危機感を抱いたのか、2021年4月末に、食べ残しや大食い動画の投稿を禁じる法律を制定している。

中国はアメリカ、オランダ、ブラジル、ドイツ、フランス、カナダなどから食糧を輸入しているが、こうした国々は中国の人権侵害に厳しい姿勢を示している。さらに、石炭と天然ガスの価格は昨年後半から今年にかけて過去最高値を更新している。中国を取り巻く国際関係の緊張状態が続けば、国民を養う生命線である食糧やエネルギーの輸入も難しくなる。

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