中国が「極端な貧富の差」の中で山ほど抱える難題 国内の社会矛盾増大、習近平政権に焦燥が見える

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掲げる看板と現実のギャップを埋めるべく、習近平政権は「共同富裕」の考え方を打ち出し、貧困脱却事業や不動産市場への介入を積極的に行っている。突然の学習塾の非営利化など、驚くような政策も飛び出し、不法利益取得の取り締まりや寄付活動の推進にも力を入れている。

急激な少子高齢化

しかし、中国の経済成長は鈍化しており、2020年夏に導入された不動産融資規制もあり、不動産開発やインフラ投資に依拠していた経済成長モデルは曲がり角に差し掛かっている。さらに新型コロナの規制も影響し、内需が弱い状態が続いている。

加えて懸念されるのが、急激な少子高齢化社会の到来だ。2021年の出生数は1062万人と1949年の建国以来最少となった。2020年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数)は1.3と日本の1.34より低く、北京や上海などの大都市ではすでに0.7前後と世界最低レベルである。65歳以上の人口は2億人を突破している。

予想を上回るスピードでの少子高齢化に待ったをかけるため、中国政府は2021年5月に3人の出産を認める奨励策を出した。しかし出生率が上がらない背景には、公的年金や社会保障制度の未整備、その農村と都市の格差、就業機会や教育を受ける機会の不平等といった事情がある。

子育て世帯への支援策を行っているのは、財政に余裕のある一部地域や企業にとどまる。昨今の学習塾への締め付けは激化する一方の受験戦争を緩和するためであろうが、まったくの対処療法でしかない。さらに、中国では結婚時に住宅を用意することが一般的であり、多額の住宅ローンの返済も重荷になっている。

人口抑制は中絶や不妊手術で目標を達成できたのかもしれないが、三人っ子政策の目標は強権的な政府でも容易には達成できないだろう。各家庭は重すぎる負担に耐えられないし、個人の権利を大切にする女性たちも国家から手段に用いられることを拒んでいる。

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