成功歯科のノウハウを「フランチャイズ」に
嶋:キッズデンタルパークはまず医院内の見た目のインパクトがすごいですよね。こんなにも原色を使っていて、楽しそうにみえる歯科はほかにはないと思います。
神保:キッズデンタルパークは子どもが通う予防歯科なので、子どもが行きたくなるような場所にしなければなりません。子どもが好む原色を施した内装だけではなく、空間全体にストーリーがあることも特徴です。「リトルデンタルタウン」という名の仮想空間で、マナブン(学ぶ)、ケアルン(ケア)、ココロン(気持ち)、キュアルン(治療)といった妖精たちが虫歯の菌と戦うという設定になっています。スタッフもそれを理解し、子どもと接する時は世界観に沿って応対や会話をするように決められています。
嶋:まるでテーマパークですね。どのような事業スタイルを取っているのですか?
神保:我々は、歯科医院にキッズデンタルパークのノウハウの提供、開業・運営のお手伝いをしています。具体的には、物件選びや求人、スタッフの教育、設計デザイン、ツール支援などですね。さらに、開業後も運営コンサルティングを行いサポートしていきます。
嶋:いわゆるフランチャイズのような仕組みですか? コンビニをやりたい人が手を挙げるのと同じで、歯科医院を開業するならキッズデンタルパークがいいというような。
神保:そうです。
痛くなる前に通う町の歯医者さん
嶋:どのような経緯でこの事業を思い付いたんですか?
神保:静岡博報堂にいた時、「麻生キッズデンタルパーク」(静岡市)の開業に関わったことがきっかけです。実は、ここの院長は友人なんです。院長はもともと予防に力を入れていました。歯は定期的にメンテナンスしながら、早期に問題解決していけば大きな疾患にはならず、健康な状態でいられるというのが、麻生院長の考え方でした。しかし、大人になってから予防するのでは、すでにだいぶ歯が悪くなってしまっている患者さんが多く、悪くなってしまった歯はもとに戻せないという課題がありました。本当に健康な歯を維持するためには、子どもの頃から教育していく必要があるのです。
溝田:そこで、麻生院長と神保、そして制作の保崎というものが、お互いに意見を出し合いながら、理想とする小児予防歯科を作っていったというわけです。
神保:何度も議論し合いながら作り上げていきました。奇抜な内装にしても「こんな歯科は見たことないし、業界から批判される」という意見も出ましたが、業界の常識ではなく、子どもたちが通いたくなる理想の予防歯科を作るという視点で議論を深めました。
嶋:反響はどうでしたか?
神保:患者さんに好評をいただきました。もともと麻生院長が予防の大切さを地域に啓発していたことも大きいですが、「子どもの頃から虫歯ではなくても歯科医院に通い、予防する」という意識が地域に根付いたと思います。オープン前の見学会にもチラシ告知のみで2日間に来場者数1,500人、オープン1ヶ月間の来院患者数も400人と大反響でした。しかし、静岡の一地域を変えただけでは、本当の理想を達成できたとは言えません。ですから、麻生キッズデンタルパークで得たノウハウを生かしてフランチャイズのような仕組みを作り、全国に私たちのやり方を広めることにしたんです。
嶋:新規開業する歯医者さんに予防歯科サービスのノウハウを提供するわけですね。そのノウハウは誰が教えるんですか?
溝田:診療に関することは我々には教えることはできませんので、麻生キッズデンタルパークのスタッフに協力いただきます。
神保:予防のやり方は大学で詳しく教えていないところが多いらしいのです。歯科医師が大学で習うのは基本的には”治療”が中心。削って埋めるということなどを徹底的に習うので、そうでない勉強は自分でやらなければいけません。加えて予防においてはチームワークや、仕事の進め方も覚える必要があり、研修が必要になります。
嶋:チームワークって、つまり働き方みたいなことも教えるということですか?
神保:歯科では医師がすべてをコントロールし、治療を行うことが常識です。しかし、予防では医師は少し後ろに下がって、歯科衛生士たちがフロントラインに立たなければいけない。歯科衛生士が子どもや親とコミュニケーションを取って、生活習慣の問題点を探ることから予防は始まります。そして、改善策や予防の知識を提供していく。
嶋:歯科衛生士にはやりがいがある仕事ですね。
神保:そうですね。衛生士学校に「衛生士さんたちが頑張れる新しい職場ができます」とリクルーティングしに行くこともあります。だいたい、いい反応をいただけますね。
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