泣く子も笑う「テーマパーク歯医者」とは? キッズデンタルパークの"農耕型"戦略

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予防医療は「積み上げ式」

保育士と一緒に楽しみながら予防の知識を学んでいく。保育士や歯科衛生士は白衣ではなく、より親しみが持てるポロシャツを着ている。

:予防には保険が適応されるんですか?

神保:いえ。疾患が見つかれば保険が適応できますが、予防は自費治療になります。

:保険が効かないとするとお客さんの数はそんなに期待できるものなのでしょうか?

神保:そこは考え方を変える必要があります。日本では痛くなったら歯科医院に通うことが当たり前になっていますので、痛くならなければ通ってもらえないし、治療が終わったら関係が途切れてしまいます。しかし、予防の場合は継続的に関係を保てます。

:どれくらいの頻度で通うのですか?

溝田:1〜2か月に一回ですね。その子の年齢や口腔内の状態によって変わりますが。

:値段はだいたいどれくらいですか?

溝田:治療なし、保険適応外で2000円ほどでしょうか。それを積み重ねていくイメージです。

神保:予防の大切さを口コミで広げていけるし、健康な状態を保つのが目的なので患者さんが脱落していきません。つまり、長期で付き合えるんですね。歯科は全国に6万8千件以上あって、コンビニより多いと言われています。そうした過当競争のなかで、極端に言えば「もしかしたら明日は誰も来ないかもしれない」という恐怖を抱きながら働いている先生もいます。だから審美とか、矯正とか、インプラントとか新しい診療のオプションを揃えようとする。しかし、どれも本質的価値が伝わなければ継続性があるものではありません。

溝田:もし、キッズデンタルパークのほかに本院があるならば、大人になってからそこに通ってもらうことができるかもしれません。

:なるほど。予防なら患者は減らないですものね。歯医者さんも潤って、患者も健康な歯を保てるなら、双方がwin-winのシステムだと言えそうです。

神保:ただ、予防していても一定の確率で疾患は出てしまうもの。しかしその時は、患者さんのほうからよりよい治療を選んでくれるようになる。歯の大切さを理解しているので、保険外でも歯にとって一番いい治療を選択してくれるのです。医師にとっても、正しいことを正しくお勧めできる土壌ができることはよいことだと思います。

歯医者で保育士が歌を歌う!?

:キッズデンタルパークに通うと、どのような手順で予防を学ぶのですか?

神保:3歳未満はお母さんと一緒に楽しい口腔ケアの勉強をしながら口腔内をチェックしていきます。3歳以上は母子分離して、自分でサービスを受けられるようにします。特徴的なのは、保育士が勤務していることです。子どもの教育をするのに「なんとなく」の対応では駄目なので、しっかりとしたプロの教育者の存在が必要なんです。

:保育士さんがいる歯医者さんってすごいですよね。

神保:幼稚園で習う「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」を踏まえた教育をしていかないと、しっかり予防を習慣化していくことができません。幼稚園のようにあいさつを練習したり、歌を歌ったりもするんですよ。また、歯科衛生士や保育士は白衣ではなく、ポロシャツの制服を着るようにしています。白衣を着た医療人として患者と距離をとるのではなく、子どもにも親にも親しみをもって接してもらうためです。

溝田:特に母親とのコミュニケーションをどれだけとれるかということが、そのお子さんに対して、どれだけ最適なサポートができるかということに関わってくると思います。

神保:実は虫歯の予防は、社会的な背景が大きいんです。お母さんがしっかり指導していても、昼間は働きに出ていて祖母に預けていたりすると、甘やかされて食生活が乱れていたりすることもある。そういう事情をきちんと聞き出さなければいけません。

:通院する初めの取っ掛かりは、やはり虫歯ですか?

溝田:いいえ、虫歯だけではないですよ。できれば虫歯になる前の健康の状態で来てくれるのが理想です。

神保:もちろん、どのような子でも受け入れます。しかし、うれしいことに最近では、「予防をする歯医者さんがあると聞いた」と問い合わせしてくれる方も増えました。

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