漢方では、胃腸は飲食物を消化するだけではなく、体の活動の原動力である「気」を作る大切な臓器とされています。胃腸はお腹が冷たい状態や、水分過多でびしょびしょの状態ではうまく働きません。結果的に、食事を消化できずに腸へ送り出してしまい、腹痛の原因になります。
さらに、消化ができていないため食べた物の「気」を十分に取り込めず、気が不足してきます。車に例えると、ガス欠でエンジンがかからない状態です。気の不足は、気力低下や免疫力低下、さらにはうつ状態をもたらします。女性の場合、お腹の冷えは子宮に伝わり、月経不順や不妊症などの婦人科疾患に発展することもあります。
問題は「冷たい物や水分の摂り方」にある
では、なぜお腹の冷えが起こるのでしょうか。その大きな原因は「冷たい物、あるいは水分の摂り方」にあります。どんなことが問題になるのか見ていきましょう。
・冷たい飲食物の問題
冷たい物の摂り過ぎや、水分の取り過ぎはお腹の冷えの原因になります。
慣れてしまうと当たり前になってしまいますが、飲食店では冬でも氷入りの水が出てくることが多く、外国から来た人は驚くこともあるようです。また、冬でも自動販売機で冷たい飲み物を買ったり、アイスクリームを食べたりすることはそれほど珍しくありません。冷たい食べ物や飲み物ばかり摂取していると、つねに胃腸が冷え、慢性的な消化不良を引き起こす場合もあります。
ちなみに、ここでいう「冷たい」とは、自分の体温以下のものと考えてください。冷蔵庫から出したての食べ物はしばらく常温に戻す、あるいは温め直すなどの工夫が必要です。
飲み物をペットボトルに入れて持ち歩いている人も多いですが、冬の常温はかなり冷たいので、保温機能のある水筒やポットなどに白湯を入れて持ち歩くとよいでしょう。私も朝、白湯を作ってマグボトルに入れて仕事の合間に少しずつ飲んでいます。
・水分の摂り過ぎの問題
温かい飲み物でも大量に飲めば、不必要な水が体内に滞る「水毒(すいどく)」という状態となり、体を冷やしてしまいます。大きなマグカップになみなみとお茶やコーヒーを入れて飲んでいる人は、お気をつけください。体を温める作用のあるお茶も、たくさん飲むと水毒となります。
かつて、一時はやった健康茶を1日2リットル飲んでいらっしゃる患者さんが来院されたことがあります。お腹を診察すると冷たく、少し押しただけでちゃぽちゃぽと音がする、まさに水毒の状態になっていました。
いくら体を温める作用のある健康茶でも、飲み過ぎは逆効果です。1回に飲む量は2~3口、50CC以下までにとどめ、30分に1回ぐらい摂ると、水分が無駄なく体内に吸収され、水毒も起こりにくくなります。
逆に冷え腹対策として行いたいのが、食材の選び方です。
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