成果を出す人が「地道に続けている」3つのこと 齋藤太郎×尾原和啓のクリエイティブ対談2

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齋藤:尾原さんから学んだもう1つは、ギブするってこと。尾原さんはいろんな人に分け隔てなく、情報も人間関係も与えていくでしょう。みんなともすると、自分のところで独り占めしようとするのに、尾原さんはそうじゃない。

③ギブする

齋藤:クライアントのことを本当にビジネスのパートナーだと思えば、「この人のために自分は何をしてあげられるかな」と思う。自分がしてあげられることの範疇には、「苦言を呈する」とか、場合によっては「叱咤する」なども含まれるかもしれない。あるいはクライアントと誰かをつなげることも、その1つかもしれない。僕はわりと人脈はあるほうなので、クライアントどうしをつなげることもあります。そういうふうに、クリエイティブ以外でも彼らの役に立つことを心がけていますね。それが結果的に、クリエイティブにもつながるのかもしれない。

尾原:そうですね。やっぱりビジネスのクリエイティブ課題解決とは何かというと、いまのゲームのルールにないところで、新しいゲームのルールをつくれるってことでしょう。そのためには、今と違う視点を提供することが、向こうにとってプレゼントになる。

僕や太郎さんって、海外のいろんなカンファレンスで偶然ご一緒することが多いけど、そこで得た情報をプレゼントするのが相手に喜んでもらうということだし、とくに人を紹介するのはギブですよね。自分の好きな人に、普通だったら知り合わないような遠くの人を紹介すると、想定外のアウトプットが生まれることもある。10人に1人とか、10人に1.5人くらいは、「いやぁ、尾原が紹介してくれた〇〇さんと会ったらさ、こんなことが起きたんだよ。ありがとう!」と言ってもらえるんだよね。それを聞くと僕も、「なるほど、これをああすると、そういうことが起こるのか」と勉強になる。やっぱり遠くのものどうしをつなぐことがイノベーションだから、イノベーションの引き出しを増やすためには、遠い情報とか、遠い人たちを結び付けるといいんですよ。

太郎さんもこの本でギブすることの大切さを説いているけれど、ビジネスのクリエイティブって、お客さんに憑依して、お客さん以上にお客さんのことを考えて、お客さんに見えていない課題の本質を抽出することでしょう。ギブするというのは相手がどうすれば喜ぶかを考えることだから、相手に憑依することでもある。だからギブを習慣にしているとクリエイティブの課題解決がしやすくなるんだと思う。

太郎さんは営業の経験を通じて、クライアントとなんでも言い合える関係性を築けるようになったから、ここまで踏み込んだ課題解決ができているんだろうね。

齋藤:でもあらためて考えても、それは僕にとって当たり前のことなので、この本を読んだ人は「当たり前のことしか書いてない」と思うかもしれないね。

尾原:大事なのは「当たり前」を、どこまで深く、かつ広くやり切るかなんですよ。太郎さんはそれをやり切っているからこそ、ここまで結果が出せるんです。

(構成:長山清子)

齋藤 太郎 コミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクター

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さいとう たろう / Taro Saito

慶應義塾大学SFC卒。電通入社後、10年の勤務を経て、2005年に「文化と価値の創造」を生業とする会社dofを設立。企業スローガンは「なんとかする会社。」。ナショナルクライアントからスタートアップ企業まで、経営戦略、事業戦略、製品・サービス開発、マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」のブランディングには立ち上げから携わり現在15年目を迎える。

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尾原 和啓 ITエバンジェリスト

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おばら かずひろ / Kazuhiro Obara

1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『モチベーション革命』『アフターデジタル』(共著)、『ザ・プラットフォーム』『どこでも誰とでも働ける』『IT ビジネスの原理』などがある。

 

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