即断即決で消費!「若者の財布」が今狙われている 新成人に伝えたい「お金の使い方」の本質

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さまざまな事業者が後払いに乗り出しているが、AI与信を導入しているところが増えている。いくらまでなら後払いしていいですよという金額を、これまでの購入頻度だったり、きちんと支払われているかなどの実績をもとにAIが判定しているのだ。よく買ってくれる優秀な消費者なら後払い枠も増えていく仕組みだ。

今やPayPayやメルペイ、ファミペイなどのスマホ決済も続々後払いを採用しており、これもデジタルネイティブな若年層と相性がいい。決済がモバイル上でスムーズになればなるほど、購入までのハードルは下がるものだ。だからこそ、決済各社はBNPLを推し進める。

昭和の大人としては、「よく考えてから買いなさい」と言いたいところだが、世の中の仕組みが「なるべく迷いなくお金を使わせよう」と動いているのが現実だ。若者の財布は狙われている。

お金は、あなたを幸せにしてくれるものに使ってほしい

若いころの自分を振り返ってみても、手元にお金がない頃ほど、したいことや欲しいものをたくさん思いつくものだ。欲しいものがあり、お金が手元になくても買える手段を持つ若者たちに、伝えたい「正しいお金の使い方」とは何だろう。

ずっと考えてきて、結局とても凡庸なことに落ち着いた。いつも筆者が書いたり述べてきた、次の2つだ。

「自分のお金の軸を持ちましょう」

「自分を幸せにしてくれるモノ・コトに使いましょう」

突き詰めていくと消費とは、生きていくために必要なエッセンシャルかつ個人的な消費と、周囲との関わりの中で生まれるソーシャルな消費とに大別できる。皆が買っていて話題だから欲しい、人との付き合いで必要だから欲しい、持っていると自慢できそうだから欲しいなど、社会との関わりや第三者からの評価が購入動機として働くのが、ソーシャルな消費だ。コロナで人とのつながりが消えた時期に一気に消費が落ち込んだのは、こうしたソーシャル支出が激減したせいもあるだろう。

外出用の服も靴もブランド品も、仕事仲間との飲み会もリアル合コンも花見も自粛され、それにかかる消費は蒸発した。元来、景気を盛り上げるのは不要不急と言われたこれらの消費だったとよくわかる。

人からどう見えたいかのためにお金を使うのは、ごく自然なことだ。ただし、ソーシャルな目ばかりを気にして使い続けると、それこそお金は足りなくなり、コツコツお金を貯めることは難しくなる。

他人ではなく自分にとって大事なものと我慢できるものとをよく考えて、取捨選択する「お金の軸」を持つこと。そして、自分に幸福感を与えてくれる用途に使うこと。新成人がすぐにそれにたどり着くのは難しいだろうが、頭の隅にそれを置いてほしいと願う。

お金の使い方は、その人の生き方を表す。新成人となる若い世代には、その言葉を贈りたい。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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