中国の入試「カンニング」驚愕のハイテク化実態 腕時計型専用デバイスや超小型イヤホンも登場

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2015年に実施された中国の入試のカンニング対策の光景。対策のため校庭で試験が実施された(写真:ロイター/アフロ)

今月行われた大学入学共通テストの問題が試験中に流出し、19歳の女子大生が出頭した事件が波紋を呼んでいる。

「科挙」の時代から学力試験が大きな権威を持つお隣の中国では、カンニングの手法の狡猾さ、取り締まりの厳しさのいずれも日本の上を行き、大学入試では監視モニターや金属探知機を駆使して、不正行為のハイテク化と対峙している。中国の大学で学び、教えていた筆者も、何度も驚きの場面に遭遇した。

2010年代半ば、中国の大学で教員をしていた筆者は、土曜日にキャンパス一帯でWi-Fiと電話回線が使えなくなったことに気づいた。月曜日になっても電波が入らず、大学の事務室に問い合わせると、「土曜日に全国一斉の英語の試験があったから学内の回線を全部切っていた。その後復旧作業を忘れていた」とのことだった。

問題漏洩防ぐためラジオ放送でリスニング

日本の試験会場では携帯の電源やデジタル機器のアラームを切るように言われても、施設側が電波を完全に遮断するというのは聞いたことがない。さらに驚いたのは、問題漏洩を防ぐため、英語のリスニングがラジオ放送で実施されていたことだ。当時でもラジオの保有者は少なかったので、試験前に教員や学生が教室分のラジオを確保するために奔走し、全国一斉のリハーサルも行われた。

こんなこともあった。学生たちは授業で常にボールペンを使っていた。ノートを取るくらいならいいが、宿題や小論文、テストの答案も全部ボールペンで記入し、間違えた場所を二重線や修正ペンで消すので、チェックする側は読みにくくて仕方ない。

筆者は、「日本で人気の『消せるボールペン』をあげたら喜ばれるのでは」と思い、一時帰国時に数本購入して学生たちにお土産として配った。すると彼らに「先生、中国では消せるボールペンは売れないでしょうね。こんな物があったらいくらでも不正行為ができるでしょう。社会的に許されないです」とダメ出しされたのだ。

その時、息子が通っていた中国の小学校でも、3年生進級時に鉛筆からボールペンに切り替えるよう指示があったことを思い出した。なぜ低学年からボールペンを使うのか不思議だったが、不正防止目的なら理解できる気がした。

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