いつもと同じ選択を好む人の伸びしろが小さい訳 「前例踏襲」「これまで通り」に安住しない生き方

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「足元が崩れてしまうような不安や恐怖」、これがいつも変化や成長の妨げになります。

ですが実際には、新しいことへの挑戦によって、これまでに築いた大切なものがすべて消えてしまうことはありえません。成功体験を手放すことは、これまでのすべてを捨てて生き直す、というような大げさな話ではないのです。

価値観の揺らぎを感じたときが次なる成長のチャンス

もう少し、軽やかに考えてみるとどうでしょうか。

日々、起こる物事を、客観的に見ようと心がけていると、

「あれ? なんかいつもと違う」

「えっ、そういうときってそういう対応なの?」

と「ハッ」と驚くことがたくさんあります。その、自分の中での価値観の揺らぎを感じたとき、それが次なる成長のチャンスです。

小さな驚きや気づき(たいていは違和感という形で現れます)を無視したり拒んだりするのではなく、自分の「当たり前」のほうに少し疑問を持ってみる。

『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

「どうしてここでは違う考え方なんだろう?」

「いつもとは違うけど、それはどうしてなんだろう?」

そんな小さな問いかけが、自分の周りに張りめぐらされた「パターン化」にスキマをつくってくれるでしょう。

こうした、「自分にとっての当たり前」に対して疑問を投げかけ続け、新しい可能性を探っていくプロセスは、「アンラーン」と呼ばれる学びの手法の1つです。アンラーンは「学びほぐし」とも言われ、凝り固まった経験や知識、スキルを一度客観視し、とらえなおすことで、新しい伸びしろの獲得を目指します。

「いつも通りで」「前と同じで」というやり方は、快適である反面、いつの間にか環境が大きく変化していても気づけず取り残される、という大きなリスクを抱えています。

前回:30代で伸び悩む人が知らずとかかる「呪い」の正体(1月20日配信)

柳川 範之 東京大学経済学部教授

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やながわ のりゆき / Noriyuki Yanagawa

1963年生まれ。東京大学経済学部教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。現在は契約理論や金融関連の研究を行うかたわら、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。主な著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『契約と組織の経済学』(東洋経済新報社)など。

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為末 大 アスリート

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ためすえ だい / Dai Tamesue

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。YouTube為末大学(Tamesue Academy)を運営。国連ユニタール親善大使。主な著作に『Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」』(共著、日経BP)、『Winning Alone』(プレジデント社)などがある。

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