中東混乱、原油価格の安定はいつまで? 畑中美樹・インスペックス特別顧問に聞く(下)

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――欧米との核開発問題の交渉を延長したイランについてどう見るか。

国内経済や社会の不満の状況から、いずれ欧米と妥協して核開発の交渉を仕上げないと国内が持たないというのが指導層の判断だと思う。最高指導者のハメネイ氏もそれには同意している。あとはどこまで妥協するかで、現実派のロウハニ大統領やザリフ外相とは違うので、そこを詰める必要がある。

11月24日が当面の交渉期限だが、イランと米国、それぞれが100%歩み寄るとは考えられない。対立点としては、濃縮ウランの遠心分離機の数をどうするか、IAEA(国際原子力機関)による査察をどう受け、疑問点にどう答えるか、弾道ミサイルの開発をどうするか、などいくつかある。部分合意に終わり、残りの対立点はまた何カ月かかけて交渉するということを何度か繰り返すことになるのではないか。

その過程で、イランが石油収入を得られるようにしてやり、現政権の維持を保証する。オバマ大統領としても任期中にイランとの核開発交渉をまとめて、低落した自らの評価を上げる成果にしたいのではないか。

不透明な対シリア政策の行方

――欧米とはとりあえず休戦状況ともいえるシリアの見通しは。

米国は、アサド大統領がいなくなれば、現政権が残ってもいいと考えているだろう。だからこそ、去年から今年初めにかけて、和平交渉をやっていた。しかし、アサド大統領は居座り、交渉は決裂した。

米国はいま、新たな戦略を練っており、最近は化学兵器による自国民の殺害の問題を持ち出している。この問題をハーグ司法裁判所へ提訴することで、圧力をかけ、アサドを辞めさせる。ただ、バース党政権は残さないとシリア国内が混乱するので、アサドなき現政権を欧米が支援する形に持って行こうと考えているようだ。もっとも、それがうまく行くかどうかは不透明だ。

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