中東混乱、原油価格の安定はいつまで? 畑中美樹・インスペックス特別顧問に聞く(下)

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――リビアは石油生産がかなり回復してきている。

日量100万バレル強程度までは行くと思う。ただ、リビアでは今、議会が2つ、内閣も2つ、首相も2人いて、イスラム派と反イスラム派が併存状態にある。これがどこかで融合しない限り、国としての統一が保てない。今は両派ともに資金不足なので石油生産を始めたが、ここから大幅に増えることはなく、両派の力関係がはっきりするまで、内紛が続くことになろう。

中東の人たちも中国情勢を気にしている

――停戦合意したロシア・ウクライナ情勢についてはどう見ているか。

ロシアの専門家ではないが、ロシアには経済制裁が効いていると思う。そのため、プーチン大統領もある程度のところで妥協しないとまずいと、考えている。あとは、ウクライナの東部をどこまでロシアの勢力圏として国際社会に認知させられるかどうかということだろう。

米国としては、かつてソ連のアフガン侵攻後にサウジを引っ張り込んで原油価格を急落させ、ソ連経済を窮地に追い込んだように、今回も原油価格を下落させる可能性がある。昨今の石油価格下落もそうした動きによるものかもしれない。

――そのほかに注目している地政学リスクは。

チャイナリスクだ。これは原油価格の下落要因となる。不動産価格の下落を見ても、バブル崩壊の兆候が顕著だ。一方で、共産党の中で汚職摘発などを通じた権力闘争が激化している。政治的な混乱と経済的な混乱が重なると、中国経済が大混乱して失速するおそれがある。そうなれば、世界の景気が後退して原油価格が急落する可能性が高まる。中東の人たちも中国に対して大量の原油を売り、原油価格に及ぼす影響が大きいため、中国情勢を非常に気にしている。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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