「日本の劣化」、安倍政権が加速させている 笠井潔×白井聡、『日本劣化論』延長戦(前編)
オリンピックは誰が望んでいるのか
白井:『日本劣化論』が出たのは7月ですが、この本のための対談をしたのは1月末でした。ですので、それ以降も次々と新しいファクターが出てきています。なので、ここでは、その延長戦をやっていければ、と思います。
さて、このイベントは丸善丸の内店の10周年記念でして、ちょうど10年前に何があったかというと、アテネオリンピックがありました。最近、ネットでみて愕然としたんですが、アテネオリンピックの競技施設が10年経って、廃墟になっているんですね。たとえば野球場とか、ススキがはえて、スタンドとかもボロボロで完全に廃墟と化しています。
これをみて、不吉だなと思うは、予定されている東京オリンピックです。もうあと6年後に迫っています。これについて疑問に思うのは、新聞やテレビなど大きなマスコミで、東京オリンピック反対を正面から訴えている会社はひとつもありません。これもひとつの劣化ではないでしょうか。
笠井:東京オリンピックに誰も反対しないのは、日本の劣化を憂慮している人たちがオリッピックをやれば、劣化をとめられるんじゃないかと思っているからでしょう。
新橋駅あたりの街頭インタビューで、サラリーマンが景気をよくしてほしいというけど、その具体的中身は一向に不明なんです。こういった人たちがオリンピックを望んでいる。オリンピックに賛成している読者が多くいれば、マスコミも商売ですから反対しにくいのではないでしょうか。
白井:3.11の津波の大損害、福島の原発事故が本質的には収束していない状況で、オリンピックというお祭りをやっている場合かというのが普通の発想だと思うんですが、そうはなっていない。建設業界からは、資材や人材をとられるため、東北復興に悪影響を与えていると聞こえてきます。こんなことをやっていいのか、できるのかという感覚にとらわれます。