潰し、棚ぼた、リベンジ。安倍内閣改造の暗闘 浮かんだ女性だけでなく、沈んだ女性も

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女性閣僚が5人も誕生した。左から山谷えりこ・国家公安委員長兼拉致問題担当相、小渕優子・経産相、松島みどり法務相、有村治子・女性活躍担当相、高市早苗・総務相(写真:ロイター/アフロ)

「第二次安倍改造内閣」が9月3日発足した。

安倍晋三首相が自ら「実行実現内閣」と命名した通り、これからが正念場となるだろう。10月には福島県知事選、11月には沖縄県知事選の「難関」が控えており、年末には消費税を10%にするか否かの決断をしなければならない。来年には通常国会での集団的自衛権の審議と統一地方選が待っている。

そうした懸念を払しょくすべく、安倍首相は人事権を断行した。焦点はまず、党幹事長ポストだ。以前から石破茂氏の幹事長更迭は規定路線になっていた。

幹事長は総裁の女房役だが、石破幹事長の登用は相性で決められたものではない。2012年9月に行われた総裁選で、当初の石破氏の勢いは安倍首相のそれをしのいでいた。小池百合子氏など多くの議員が、石破氏を支持していたからだ。安倍首相は辛勝したものの、そうした声を無視できず、石破氏を幹事長に据えざるをえなかった。

しかし資金と権限が集中する幹事長職に、自分の後を狙う石破氏を長く置くわけにはいかない。しかも滋賀県知事選など、石破氏の指揮で戦った地方選は惨敗続きだったのだ。

なぜ「小渕幹事長」報道が出たのか?

そうしたことが影響してか、石破氏を中心とする「無派閥連絡会」が8月7日と8日に新潟県・湯河原で合宿を行ったが、参加者は約30名と振るわなかった。石破氏主催の「さわらび会」が一時は100名近くが参加したことと比べていかにも寂しく、石破氏の凋落を象徴しているように見えた。

では次期幹事長は誰なのか。読売新聞は8月31日、「小渕(優子)幹事長で調整」と報じている。

だが党内ではこれを信じる人は少数だった。ある自民党関係者はこう話す。「小渕氏に幹事長職は重すぎる。そもそも安倍首相の本命は、財務相を務めたこともあり消費税増税賛成論者の谷垣禎一氏だ。でもそれは最後まで隠しておきたかった。そのために官邸は読売にリークし、小渕幹事長説を流させた」。

そしてこう付け加えた。「小渕幹事長説で石破氏続投の可能性は皆無になった。見事なまでの石破潰しだ。これで石破氏が次期総裁選に出る芽までなくなった」。

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