中東混乱、原油価格の安定はいつまで? 畑中美樹・インスペックス特別顧問に聞く(下)

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短期的に言えば、今回サウジアラビアが空爆に加わったことで、イスラム国は必ず復讐する、と言っている。サウジの場合、かなり強固にガードはしているものの、製油所や積み出し基地、油田、パイプラインなどの石油施設に対するテロの可能性が以前より高まっており、それが石油価格に影響を与えかねない。

――イラクの石油積み出し基地がある南部のバスラが攻撃されるリスクはあるか。

南部はシーア派の人たちの地域なので、スンニ派のイスラム国が入っていくことはかなり難しいと見られる。北部から南部に通じるパイプラインなどへの攻撃はありうるが、パイプラインは3~4日で修復は可能なので、何回も攻撃が続かない限り、短期的な影響にとどまろう。

混迷の発端はアラブの春、サウジに波及も

――スンニ派同士が対立したり、「敵の敵は味方」といったねじれ現象もあったり、混迷を極めているように見える。

発端は11年にチュニジアで始まった「アラブの春」。エジプト、リビア、イエメンの4カ国で政権が交代した。アラブの春は長期独裁政権に対する民主化要求が発端で、独裁政権は倒れた。その後に出てきたのがイスラム原理主義政権。世俗派とリベラル派がその政権を引きずり下ろしたのがエジプトとチュニジアだった。リビアとイエメンはまだ決着がついておらず、そうしたイスラム原理主義派と世俗派との対立がほかの国にも影響している。加えて、イスラム原理主義の中でも対立があり、さらにシーア派とスンニ派という宗派の対立もある。

スンニ派のサウジは君主独裁制が続いており、民主化要求にも直面している。イスラム国を叩いたとしても、その後のイラクやシリアはどうするのかという展望はない。そうした状況で米国に加担することが、後々国内の反発を招く可能性がある。サウジのリスクも今までより確実に高まっている。

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