「いくら食べても太らない人」に隠された秘密とは 2つの因子が痩せやすい体質かどうかを決める

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クリスとジョージの仕事内容は同じですが、ジョージの日々のカロリー燃焼量はクリスよりも多く、デスクに座って仕事をするクリスが1時間に80キロカロリーほどの燃焼であるのに対し、立って仕事をするジョージは100キロカロリーほど燃焼しています。

欧米社会では、人々が座っている時間は平均して1日12時間といわれます。睡眠時間が7時間と仮定すると、合計19時間、座っているか寝ていることになります。座る時間が長いほど体重は重くなり、糖尿病や循環器系の病気リスクも高くなってしまいます。では、私たちはこの生活様式をどうしたらいいのでしょうか? 

数年前、オランダの研究者たちがある調査を行いました。調査には3つのグループが参加し、1つは、1日に14時間ずっと座っているグループ。2つ目のグループは13時間座り、最後の1時間に運動します。そして3つ目のグループには8時間座り、4時間歩いて、2時間立ってもらいました。どのグループの代謝が一番良いかを調べるために、砂糖入りの飲みものを飲んでもらい、含まれるグルコースの処理度合いを測定しました。

座る時間が長いほど体重は増えていく

「ずっと座っていた人たち」が最下位だったのは自明です。しかし驚きだったのは、1時間運動したグループよりも、座る時間を8時間に減らしたグループの結果が良かったことです。調査開始後、たった4日間でその差は現れました。

この調査でわかることは、少しの運動をしても、座りっぱなしの害悪は消し去れないということです。それよりも、足をぷらぷらさせたり、クリップや事務室の備品をいじったりと、細かい動作を継続するほうが、代謝は高まるのです。

こういう細かい動作が多い人たちを英語で「フィジター(fidgeter)」と呼び、痩せている人たちは肥満の人に比べて、細かい動きを習慣的に行う人が多いという研究結果もあります。つまり「活動性熱産生」の差が、太りやすいかどうかの差を分けていたのです。

可能なら、デスクの高さを調節して立って仕事ができるようにしてみましょう。同僚に変な目で見られたら、「ウィンストン・チャーチルは、スピーチの原稿をいつも立って書いていたんだぞ」と言えば大丈夫です。

太りやすい人と、そうでない人の差に潜むもう1つの要因は、「ストレス」です。

ストレスを感じると、視床下部が動き出し、そこから分泌された物質が下垂体に信号を送ります。それを受けて、下垂体は異なる種類の調節ホルモン(ACTH)を分泌し、それが血中を旅して副腎に届きます。そして副腎はストレスホルモン「コルチゾール」を血中に多く分泌します。

コルチゾールは心臓の脈を速くし、短時間で血圧を急上昇させます。より多くの糖や酸素を脳などの臓器に注ぎ込み、頭をフル回転させ、思考をはっきりとさせるためです。腹を空かせたトラに突然遭遇したときは、急いで逃げなければなりません。ストレスを感じるとコルチゾールによって糖が筋肉に注がれ、エネルギーと動作に変換されるのは、そんなときには欠かせない機能なのです。

驚くべきことに、このストレスの流行と肥満の流行の発生時期は、ほぼ重なっています。現在、世界の成人人口の39%が肥満といわれますが、ストレスが肥満要因になりうることが、科学的にどんどん裏づけられているのです。

それでは、ストレスはどれほどの影響を与えるのでしょうか。ある女性の例を紹介します。

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