いずれは、二輪車にも実装が始まった前走車追従機能である「ACC/アダプティブ・クルーズ・コントロール」と連動させたり、開発が進む二輪車向け衝突被害軽減ブレーキを作動させた場合の車体安定性を高めたりする。
さて、ここまで概要を紹介したホンダの交通事故死者ゼロへの取り組みだが、取材を続けていくと、「ここまで大きな目標を掲げるなら、“交通事故ゼロ”すら目指せるのではないか?」とさえ思えてきた。そこで、取材現場に同席いただいた技術者の方々に対し率直に質問をぶつけてみた。
すると、回答はそろって同じ主旨だった。「甚大な被害となる死亡事故の原因を調べると、たとえば車速が高い、よそ見やうっかりミスが重なる、ドライバーの回避動作が行われないなど、発生原因が明確です。よって、そうした明確であるミスやリスクの予兆についてAIを駆使して確実に捉え、技術で抑えることができれば死者ゼロが見えてきます」という。
まずは被害が双方に大きい死亡事故ゼロから
では交通事故ゼロはどうか? 「対して事故ゼロの場合は、死亡事故ゼロと比較して対応しなければならない条件が劇的に増えます。たとえば人が歩く速度と同じ2~3㎞/hで走行する車両のドアミラーと、歩行者の腕がコツンと触れた場合でも、厳密には車両が動いていることから交通事故とカウントされるわけです」。
なるほど、まずは被害が双方にとって大きい死亡事故をゼロにすることで、次のステップとして事故ゼロ社会が見えてくる、そんなイメージが現実的だと痛感した。
メーカー単独で目指すにはとても大きな「2050年、交通事故死者ゼロ」計画ながら、事故の発生原因を突き詰めることで実現の可能性はグッと高まることがわかった。ホンダが示した、人と車両がお互いに危険な状態に近づかないという考え方は、この先、広く世界に認知されていくと筆者は考えている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら