fMRIの被験者(現時点で約300名)による検証では、なるべく現実に近い運転環境に近づけて仮想空間(バーチャル映像内)を走行させた。そして映像内で発生する危険な状態、例えば他車の急な割り込みなどに対して、運転操作や身体的な反応を計測する。さらに、割り込み前後の脳活動の変化までもfMRIによって細かく画像として記録した。
得られた解析結果から、事故リスクが最も低い安全なドライバーは、割り込み車両に対して脳の特定部位が素早く反応し、それにより正しい視線移動と確実な運転操作が促されていることがわかってきた。
「ヒューマンエラーは結果であり、根本的な原因ではない。根本をたどるプロセスが重要」とは担当のホンダ技術者の弁だ。
確かにその昔から、交通事故のニュースでは「ハンドル操作を誤って……」といった曖昧な表現が用いられるが、誤った運転操作は結果であり、根本的な原因は自身の脳活動であったり、他車の動きであったりすることがある。こうしたホンダの取り組みにより、事故原因を根本から摘み取れるようになればいいと思う。
今後は、健常な高齢者や、軽度認知障害(MCI)高齢者でのテストも行われ、運転操作における認知症特有の脳活動を早期に解明し、次なる技術開発へとつなげていく。
歩行者にも注意を促して事故回避を目指す
2:AIによる歩行者飛び出し予測・判断
歩道の歩行者を車載の光学式カメラで認識し、その映像から専用開発したAIが歩行者の次なる行動を予測する。そして、歩行者が車道に飛び出したり、車両と接触してしまったりするリスクを判断する。
具体的には、“リスク先読み運転支援”として歩道の歩行者の顔や身体の向き、さらにはかかとの向きを認識して、接触事故のリスクが高い場合には自動ブレーキ制御を介入させる。これは、将来のレベル4以上の自動運転社会を見越した技術だ。
また、横断歩道の手前にいる歩行者を車載の光学式カメラで確認できた場合には、車両を自動的に停止させて歩行者の横断を優先する。このとき、歩行者がスマートフォン画面に目線を落としていた場合には、そのスマートフォン画面に注意喚起画面を出す。つまり、車両でブレーキ制御を行いながら、歩行者にも注意を促すことで両者が協調した事故回避が目指せるという仕組みだ。
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