企業リーダーは本気でNPO運営にかかわるべきだ アクサHDジャパンの安渕聖司社長兼CEOに聞く

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2つ目のメリットは、社会に必要とされているのに、なかったり、不足しているものについての情報が増え、そこからビジネスの新しいアイデアも生まれてくることです。

いろいろな課題に触れる中で、「この領域って、どこの誰もやっていないんだ」「この分野には困っている人がこれだけいるんだ」ということをわかります。

例えば、人口の少なくとも6~7%が「LGBTQ」であるということは、言い換えれば、従来型の顧客ターゲティング(属性を絞り込むこと)では、まったく届いていないマーケットがそれだけあるということです。

これをビジネスにつなげているのが丸井グループですね。同社は、例えば「FtM」(Female to Male)のトランスジェンダーの人向けに、就職のスーツを提供したり、その逆の「MtF」の人向けにパンプスのサイズを27cmまでそろえたりしています。

社会のニーズとビジネスをしっかり結びつけて、お客様の広いニーズに応えようとしています。これは、LGBTQを含め、どういう社会課題があるかを知らないと、まったく思いつかないことです。丸井は創業時からトップも社員も積極的に社会とかかわり、ビジネスに活かす文化が備わっているため、こうしたことができるのだと思います。

また、例えば、災害等が起きた際に、現場と離れた本社の一部の人が集まって「どうやって援助したらいいだろうか」などと話している企業も多いのではないでしょうか。

こういうとき、普段から接点のあるNPOに「今現地で何をしているの?」とひとこと聞くことができれば「すでに現地に人を派遣して救助活動をしているのだけど、これが足りない」などといった情報が得られるわけです。外部組織の情報がどれだけ素早く入るかで会社自体のスピード感も動く内容もまったく変わってくるのです。

3つ目は、多様性を理解し、積極的に受け入れて活用することにつながります。さきほど挙げたジェンダーの話だけではありません。社会にたくさんのアンテナを張ることがイノベーション(革新)を生み、良い人材を獲得し、多様化する顧客ニーズへ応えられるようになります。

企業の原点に立ち返り、存在意義を問い直す契機に

最後の4つ目は、「パーパス・ドリブン経営」(企業の存在意義や目的に基づいた経営)の観点から、大いに学べるということです。

そもそも企業も、創業の理念に立ち返れば、社会の課題を解決したり、ニーズを充たしたりすることでビジネスを行ってきているはずです。しかし時が経つと、組織も社員も忘れてしまいがちです。そこで、やはり会社のトップがつねにパーパス・ドリブンなメッセージを社員に伝える必要があります。そうすることで、社員もその会社で働くことが、よりよい社会への貢献になっていることを、改めて見出すことができます。

アクサグループでも「すべての人々のより良い未来のために。私たちはみなさんの大切なものを守ります」というパーパス(存在意義)を核にした経営をしています。つねにこの原点に立ち戻ることで、社会に対して「うち(の会社)も何かやらなきゃいけないと思って行動を始めた」という人がでてくるのです。

実際、企業がNPOから学べることは山のようにあるのです。それはなぜか。NPOには社会の課題を1つに絞り込み、それを解決するために団体を設立しているところが多いからです。大企業では、そういう企画を出しても「採算が合わない」などと言われ、なかなか通りません。

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