企業リーダーは本気でNPO運営にかかわるべきだ アクサHDジャパンの安渕聖司社長兼CEOに聞く

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大阪で、ホームレスの人たちの支援を行っている認定NPO法人「Homedoor」(川口加奈理事長:写真右から2人目)の活動に参加する安渕氏。寄付だけでなく、夜回りにも準備から参加、弁当を配ったりしながらホームレスの人たちの話を聞く(写真:筆者撮影)
アクサ・ホールディングス・ジャパンの社長兼CEOである安渕聖司氏は、社会のなかで奮闘する多くのNPO(特定非営利活動法人)の理事やアドバイザーをつとめる。大企業のトップが積極的にNPOに携わるのは珍しくない。だが安渕氏は「NPOを知らずしてビジネスをやってはいけない」とまで断言する。企業経営者やビジネスパーソンがNPOに関わる意義とは何か?組織や国家などさまざまな壁を越えて、社会課題解決のため共創するリーダーや組織を育てるWIT代表の山本未生氏が話を聞く。

NPO運営をすることでまったく違う世界が見えてきた

――なぜ、NPOがビジネスにとって大事だと思うようになったのですか?

安渕聖司(やすぶち・せいじ)アクサ・ホールディングス・ジャパン株式会社 代表取締役社長兼CEO

三菱商事を振り出しに、外資系投資銀行などを経て2009年から2016年までGEキャピタル・ジャパン社長兼CEO、2017年ビザ・ワールドワイド・ジャパン社長、2019年から現職。経済同友会幹事。学校法人至善館理事、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ 理事、ヒューマンライツウォッチ東京委員会委員、学校法人UWC-ISAK ファウンダーなども務める。早稲田大学政経学部卒、ハーバード大学経営大学院卒(MBA)(写真:筆者提供)

きっかけは、私がGEキャピタル・ジャパン社で社長をしていたときです。GEグループでは、児童養護施設に入居する高校生たちに英語を学んでもらい、アメリカのフロリダ州にある児童難病施設にボランティアとして派遣するというプログラムをNPOと協働して行っていました。

しかし、スポンサーとして挨拶のときだけ登場しているのではつまらない。そこで「自分も高校生にかかわってみよう」と思い立ち、実際に英語を教える現場に参加してみたのです。

すると彼らがたった3カ月で驚くほど成長することに衝撃を受けました。これを機にいろいろなNPOに出会うようになり、見える景色がまったく変わったのです。

ひとことで言えば、大都市のビジネス街だけで暮らしていると絶対に知ることがなかったであろう現実社会があるということです。「こんなことも知らずに俺はビジネスやってていいのか!」と思うようになったのです。

例えば、今ではある程度有名になりましたが、島根県の離島である海士(あま)町に、全国から留学する高校生が集まることを知って、実際に訪問してみて、都会と地方や地域に対する考え方がガラリと変わりました。

また、ホームレス支援の夜回りに実際に参加して、直接ホームレスの人たちから話を聞くことによって、彼らが決して怠慢でも不真面目でもなく、社会の仕組みからはじかれてしまった人たちであることがわかったりしました。

こうしたことをきっかけに、今では、ビジネスリーダーである個人として、20ほどのNPOや学校の支援をしています。どんな団体の支援をしているかは、アクサの従業員にも伝え、一部については、アクサも支援しています。

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