「肥満がなぜ悪いのか」炎症細胞との関わりがカギ 幼少期に作られた脂肪細胞数は減ることはない
人類にとって脂肪はなくてはならない存在ですが、ときに脂肪には異常事態が起こり、人体に牙をむくことがあります。そのサインが肥満です。肥満はそれだけでも悩みのタネになりますが、肥満をきっかけにさらに深刻な事態につながることもあるのです。
実際、太っている人の約半数は、それによる症状を少なくとも1つ、2つ抱えていると推測されています。例えば高血圧、睡眠時無呼吸症候群、高コレステロール値、糖尿病などです。
今、症状が特にないからといって、そのままにしておくと肥満はどんどん悪化し、これらの病気から逃れられなくなります。
肥満が進んで病気になったロブのケース
ここで、ある男性の例を紹介します。
ロブは65歳で退職するまで、教育の専門家として働いていました。2人の子どもと2人の孫に囲まれ、バイクやセイリングなどたくさんの趣味を楽しみ、充実した日々を過ごしています。自分の好きなことに生き生きと取り組んでいるロブですが、昔からこうだったわけではありません。
「40歳になるまでは体重のことなんて気にしたことはなかったし、何でも食べたいものを食べていたよ。自分の体にも不満はなかった。だけど失職と離婚を経験して、当時は食べることでしか自分を慰めることができなくて、食べることだけが支えになっていた。すると徐々に体重が増えて、数年前に110キロまで太ってしまった。しかも、ほとんどの脂肪は腹まわりについていて、まるで自分の父親の姿を見ているみたいだったよ」
ロブはもう以前のように痩せていないことを悲しく思いましたが、「それが人生だろ」と、仕方なく思っていました。
しかし、それからしばらく経って、彼はやる気を出さざるをえなくなりました。肥満のせいで体調がおかしくなってきたのです。