「肥満がなぜ悪いのか」炎症細胞との関わりがカギ 幼少期に作られた脂肪細胞数は減ることはない

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スウェーデンの研究チームは異なる年齢層(0〜60歳)のあらゆる体型の人たちの脂肪サンプルを調べ、脂肪細胞を数えました。その結果、幼年期と思春期に脂肪細胞の数が増加し、20歳を過ぎたあたりから数は一定になっていました。つまり、子どものときに肥満を解消しないままでいると、その数の脂肪細胞と一生付き合うことになるのです。

脂肪細胞の数を記録し、減少したときに対策するシステムが私たちの体の中にはあるのです。この調節はつねに行われ、他の細胞と同じように脂肪細胞も死に、幹細胞から産生され、新しい細胞と取って代わられています。

毎年、体脂肪中の10%が新しい細胞に置き換わると推測されています。つまり10年間で脂肪組織は完全に新しくなり、その際に脂肪細胞の数が一定に保たれるよう、体が働きかけているのです。

幼少期に太っていると痩せにくい

脂肪細胞の数が多い子ども時代を過ごし、そのまま大人になると、痩せにくく、痩せられたとしても維持するのはとても難しくなります。痩せても細胞の数はそのままで、サイズが小さくなった細胞で脂肪組織が構成されることになり、体はなんとしても「昔」の状態に戻りたいと、食欲が増進し、脂肪が燃えにくくなるためです。だから、子どものときから太っていた人が細身になるのは、すごく難しいのです。

お腹にたまる脂肪細胞は臓器の間に挟まっているため、膨張する余裕がなく、あまり多量は蓄えられません。脂肪細胞の脂肪量が「最大貯蔵量」に達してしまうと、血中の余分な脂肪酸はどこか他の場所へ行かなくてはなりません。その結果、筋肉や肝臓、心臓の周りなどの好ましくない場所に蓄積され、その機能に影響を及ぼします。

さらには、脂肪細胞が脂肪でぎちぎちになると、血管が引き伸ばされ、新たな血管が必要になります。血管が形成されるまでに時間がかかると、中心部の脂肪細胞は酸欠状態になり、大きなダメージを受けて死んでしまいます。すると修復のために炎症細胞が登場し、「ほら、みんなおいでよ!」と、より多くの炎症細胞を集めます。

しかしながら、腹部の脂肪から分泌される炎症物質は量が多く、血中に分泌されれば血糖値が上がり、血管壁に炎症を引き起こし、循環器疾患のきっかけにもなりえます。そのため、腹部の脂肪には要注意なのです。

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冒頭で紹介したロブは、その後、インスリンの量を減らしたいならば痩せるしかないと医師から告げられ、覚悟を決めて生活習慣を根本的に見直すことにしました。栄養士に食事のアドバイスをもらい、愛犬と毎日散歩したり、エレベーターの代わりに階段を使ったりと、生活習慣の改善を試みました。その結果、彼は10キロの減量に成功しました。

「力が湧いてきて、インスリンの量もかなり減らせたよ。無呼吸症候群も改善されたし、そのおかげで朝起きた時はスッキリしているんだ。だけど、もっと減量して血圧の薬を飲まなくていいようになりたいんだ。毎日が戦いだよ」

まだ目標には届かないかもしれませんが、一喜一憂しながらも彼は前に進み続けています。

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