「肥満がなぜ悪いのか」炎症細胞との関わりがカギ 幼少期に作られた脂肪細胞数は減ることはない

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「何をするにも力が出ないし、やたらと喉が渇いた。かかりつけ医のところに行ったら糖尿病だって言われたよ。薬を飲み始めたら副作用で吐き気がしたり、下痢をしたりするようになって、すごく苦痛だった」

ロブは睡眠時無呼吸症候群にも苦しんでいて、1時間で30回以上呼吸が止まるときがありました。さらには糖尿病で失明する可能性もあると指摘され、怖さに震える日々でした。しかし、その間もロブの血圧は上がり続け、インスリン注射の量が増えていったのです。

ロブは脂肪がつきすぎて病気になってしまいました。こういう人はさして珍しくありません。

脂肪は脂肪細胞という小さな細胞が集まって構成されています。そして脂肪細胞の間には炎症細胞(白血球)が挟まっていて、病原菌などが侵入したらやっつけようと待ちかまえています。

脂肪細胞が衰えることなく機能し続けられるよう、死んだ細胞や働いていない細胞を食べるのも、炎症細胞の役割です。脅威の深刻度によっては、警報を発して応援部隊(より多くの炎症細胞)を呼ぶ場合もあり、この細胞がなければ、ウイルスやバクテリア、菌類などのごく小さな侵入者によって命を失うことになります。

炎症細胞が脂肪に多量に蓄積されると…

しかし、この細胞がどれほど重要な役割を担おうとも、負の影響も無視できません。

例えば、炎症細胞が脂肪に多量に蓄積された場合、炎症物質が多量に血中に分泌され、広範囲に影響を及ぼします。これは「無症状炎症」と呼ばれ、この炎症物質こそが、肥満とあらゆる病気を結びつけています。循環器系だけでなく、脳にまで影響を及ぼし、気分が落ち込んだり、うつ病を引き起こしたりすることもあります。

痩せ型の人が徐々に肥満になると脂肪は大きな変身を遂げますが、その変化は脂肪細胞から始まります。痩せた人と太った人の腹まわりから脂肪細胞を採取し、2つを顕微鏡で比べると、いくつかの重要な点に気づけます。

まず、当たり前ですが、太っている人の脂肪細胞のほうが大きいです。そして多くの場合、太っている人のほうが脂肪細胞が多いです。

生まれてから死ぬまで、脂肪細胞の大きさと数は変化し続けると、長い間信じられていました。つまり体脂肪が増加すれば脂肪細胞も大きくなり、その数も増えるはずだと思われていました。

しかし、事実は違っていました。

1970年代、この仮説を証明するために、20〜30歳の痩せ型の男性を被験者にして、4カ月間の実験が行われました。彼らは食べる量を増やし、運動量を減らして、平均して10キロ太った後、食べる量を減らし、運動量を増やして、元の体重に戻しました。減量中のあらゆるタイミングで、体のさまざまな部位の皮下脂肪からサンプルが採取されました。

結果は驚くべきものでした。

体重が増加したときは、脂肪細胞が大きくなっただけで、細胞の数はまったく変わらなかったのです。そして減量したときも、脂肪細胞は小さくなっても、数は減りませんでした。脂肪細胞の数は一定に保たれ、減らすことはできないのです。

では、脂肪細胞の数はいつ決まるのでしょうか?

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