「なかなか、いい声、しとるなあ」

気づきを与えてくれた問いかけ

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

ハーマン・カーン(1922~1983年)という人は、アメリカの未来学者、軍事理論家であった。また、シンクタンクのハドソン研究所の創設者であり、所長であった。このカーン氏が、昭和40年(1965年)代前半、日本で非常に有名になり、その著『紀元2000年=33年後の世界=』は、多くの人に読まれ、紹介され、また、引用された。

なぜかと言うと、それまでの日本は、経済成長を続けてはいたが、まだ日本人は、自信を持つということはできなかった。なにか、自信無さ気であった。果たして、日本は先進国と言っていいのか、国際社会は、日本をどう評価しているか、という思いであった。そういうときに、初めてと言っていいと思うが、海外の権威から大きな評価が示された。示したくれたのが、このカーン氏であった。日本人はこの評価に大いに喜び、連日のように、紙面を飾り、論評がされた。

「どういう人か、知ってるか?」

そのハーマン・カーン氏が昭和43年(1968年)に来日した。彼の滞在中、松下幸之助と、京都の松下の私邸真々庵で面会するという予定が入った。

その予定の日の10日ほど前であったと記憶している。松下と雑談していると、突然に「そや、こんどな、ハーマン・カーンという人が、わしに会いたいと言って、来るそうや。きみ、ハーマン・カーンさんという人は、どういう人か、知ってるか」と聞く。もちろん、前述のように、新聞や雑誌、マスコミで取り上げられていたから、知らないことはない。「はい、ハーマン・カーンという人は、21世紀は、日本の世紀だ、と言っている、アメリカのハドソン研究所の所長で、未来学者です」と答えた。松下は、頷きながら、「そうか」と一言。私は、内心、即答できたことで、大いに満足した。

それで終わったと思っていたが、翌日も、報告の後、雑談していると、「こんどな、ハーマン・カーンさんという人が、わしに会いたいと言って、来るそうや。きみ、ハーマン・カーンさんという人は、どういう人か、知ってるか」と聞く。

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