具体的な仕組みは、廃炉や使用済み燃料の処分費用も含めた原子力のコスト回収に必要な電気料金水準として「基準価格」を決め、その基準価格がマーケット価格を元に算定される「市場価格」を上回っている場合、その差額を全需要家から回収し、原発事業者に対して補填する。
逆に、基準価格が市場価格を下回った場合には、原発事業者が差額を全需要家に支払う。そうすることで、原発事業者の損益を平準化させ、財務・会計面でのリスク軽減を図るものだ。
英国政府はこのCfDを、フランス電力公社(EDF)がイングランド南西部のヒンクリー・ポイント原子力発電所で進めている新増設計画(160万キロワット×2基、2023年に竣工予定)に導入することを昨年10月に決めた。
基準価格は1キロワット時当たり15.7円(1ポンド=170円換算)。これは、火力発電などを含めた現在の市場価格の約2倍に相当する。陸上風力の基準価格である15.3円を上回り、大規模太陽光の17円と比べても大差ない。
また、保証期間は35年間と、再エネの15年間を大幅に上回る。これでEDFは、ヒンクリー・ポイントCという新設原発の運営において、長期にわたってコストを確実に回収することが見込める。まさに、原発を維持推進するための国家保護策といっていいだろう。
経産省は既設原発への適用も検討
このCfDを議論の俎上に載せるということは、経産省は明らかに日本への導入を視野に入れているはずだ。しかし、日本政府は現状、「原発の新増設、リプレース(老朽原発の建て替え)はまったく想定していない」というのが正式見解だ。その方針を変えるのか。
経産省資源エネルギー庁原子力政策課の担当者は「英国政府の担当者とアポイントが取れたので、諸外国における例示の1つとしてプレゼンテーションをしてもらっただけ。日本での原発新増設を念頭においたものではない」と説明する。
ただ、「既設の原発を対象として、日本に合った形でモディファイ(部分的に修正)して導入することも含め、今後の検討課題」とも話す。年内にも専門家によるワーキンググループを作って具体的に議論していく方針という。
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