経産省としては、将来的に新増設原発に導入することも視野に入れつつ、当面は新増設の対象外としている建設中の電源開発・大間原発(工事進捗率約4割)や中国電力・島根原発3号機(ほぼ完成済み)への適用、さらには既設の原発に適用することを選択肢に入れているようだ。
原子力小委の委員を務める吉岡斉・九州大学教授(専門は科学史、科学社会学)は委員会へ意見書を提出。英国が現在計画中にあるCfDについて、「このアイデアの核心にあるのは、再エネと同様の優遇策を、原発に対する従来からの優遇策に加える形で、原発に提供するというアイデアである」とし、世界的に電力自由化を推進している観点から「まったく正当性を持たない」と批判する。
そして吉岡氏は、「(英国が原発の電気を)電力市場の相場の2倍の価格で買い取ろうとしていることは、原発の経済性が歴史的に反証されたことを意味」し、「日本を含め、世界のいかなる国も見習うべきではない」と主張する。
また、電力・エネルギー政策が専門の高橋洋・富士通総研経済研究所主任研究員は、「初期投資を確実に回収できる保証がなければ、原発はハイコストで事業会社として手を出せないというのは今や国際的な認識。日本でも”原発はコストが安い”という議論はもうやめるべきだ。原発の真のコストを示さず、エネルギーミックス(電源構成)など大きな方向性を出さないうちに、支援策だけ議論するのはおかしい」と指摘する。
廃炉の会計リスク軽減策拡充も要求
CfDは、原発のコスト全体を対象に収益安定化を保証する制度。これに対して、部分的なコスト負担を軽減して支援する方法も議論されている。1つは、廃炉に関連した財務・会計リスクの軽減策だ。すでに昨年夏に「廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ」で議論され、昨年10月から改正省令が施行された。
具体的には、以前は運転終了を機に発電所の残存簿価を一括費用計上(減損処理)する必要があった。が、見直し後は、廃炉中も使用される使用済み燃料ピットや格納容器などの一部設備(全体の半分程度)については、運転終了後も耐用年数に応じて減価償却費の計上を継続できるようになった。複数年での分割処理が増える分、財務的なリスクを軽減できる。
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