「大銀行のトップ」になるのだけは勘弁

松本大 マネックス証券代表取締役社長CEOの好き嫌い(下)

楠木:会社でもプロジェクトでも、ゼロから新しい仕事をつくる人の中には、すごく強いオーナーシップを持っていて、その仕事から離れるのを嫌がるタイプもいます。松本さんは違うようですね。仕事が確立して大きく回るようになったら、次のことにチャレンジしたくなる?

松本:正確に言うとそうではないですね。兄貴の死も影響していますが、「自分はずっと回転を上げていなきゃいけない、上げていたい」という気持ちがあります。だから、大きくなっても高回転でいけるなら、それでもいいのです。けれども、うまくいって規模が大きくなれば、回転は下がります。そうすると違うところでもう1回、自分を高回転にしないといけなくなる。

「小トルク・高回転」が好き

松本:創業間もない頃のマネックスの例で言えば、赤字から脱出して儲かり始めたとき、あえて日興ビーンズ証券を買収しました。僕は創業社長で、ベンチャー時代から一緒の人とずっと続けてやっていれば楽なことも多いし、単独で利益が出ているなら、そのままでもいい。大手証券会社の子会社と合併したら、大変なのはわかっていました。僕の嫌いな政治的駆け引きも必要になるかもしれないとも思っていました。でも、あえてやらないと負荷が下がると感じたから実行しました。2004年のことです。

マネックスグループは2011年に「グローバル・ビジョン」という戦略を打ち出し、ものすごいスピードでグローバルな事業基盤を構築しています。トレードステーションというアメリカのオンライン証券会社を買収するなどのコーポレートアクションをとった結果、今やグループ従業員の7割が海外で働いている、そんな姿の会社になりました。なので、それは大変ですよ、怠けていると追い出されそうで(笑)。でも、僕はそういう方向へ行ってしまうのです。自分にうんと負荷をかけて、もっと回せ、もっと回せってところを探してしまう。「できたから、もういいじゃん」という満足はありませんね。

楠木:要するに「小トルク・高回転」が好き(笑)。面白いですね。今のお話だと、回転を上げるためであれば、政治的駆け引きのような嫌いなことが生じても、全然かまわないということですか?

松本:いや、ストレスもあるし、かまわないわけではありませんが。だけど、どこかに行くことに興味があるのではなくて、どこまで行けるかに興味があるタイプですね。

楠木:チャレンジでどこまで行けるかは、ベンチャーの起業家に多いと思いますが、いろいろなタイプがいますね。ベンチャーの起業家では、こういう人が好きで、こういう人が嫌いというのはありますか?

松本:ずるい人が嫌いです。賢くなければ商売はできないとは思いますが、僕の好みは直球勝負。相手が誰だろうと直球。ブログを創業間もない1999年から、1営業日も休まずに書いていますが、時の事務次官の発言に対してクレームを書いたこともある。何につけ、おかしいと思うことがあれば物申しますね。

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