中国・労働争議の教訓--盲点は駐在員の赴任後教育だった
ここ数カ月間に決着した労使交渉ではほとんどの日系企業が20~30%の賃上げをのんだが、これは経済成長に加え、賃上げを内心では容認する中国政府の姿勢を忖度(そんたく)すると、仕方ないものといえる。
ただ、細心の注意を払っていても、労働争議は起きるときは起きる。今後も賃上げや労働環境改善の要求は出てくるだろう。そのことを織り込んだうえで、日本企業は引き続き中国事業を展開しなければならない。
コミュニケーション不足がもたらすもの
ストライキに見舞われた日系企業は一様に「まさかウチで起こるとは思わなかった」と口にし、あたかも日頃から対策は万全だったといいたげな釈明が多かったが、それにどれだけの人が納得したか。
工場の一角でストライキの火の手が上がったと聞けば日本人駐在員が無意味に走り回り、賃上げ交渉と聞けば日本から急きょ任命された責任者が慌てて飛んでくる--このように、目の前の現象に振り回され、目先の火消しに追われる「その場主義」の蔓延が見られた。
しかも、本社は現場の初期対応の巧拙を問い、現場は本社の中国理解度を疑う。本来あってはならない親子間(本社と中国現法)での信頼関係のほころびも出た。
本社と現法の間のコミュニケーションの重要性を強調するのは日本電気(NEC)だ。日本電気は今回の労働争議の渦に巻き込まれなかった企業のひとつである。
「わが社では本社に現法をサポートする窓口の組織(海外営業ビジネスユニット)があり、担当の人材を配置しています。さらに、人事、広報、経理、法務、資材など各部署でも対応できるマトリックス構造にしています」と、同社人事部の佐藤秀明・人事マネージャー。