中国・労働争議の教訓--盲点は駐在員の赴任後教育だった
中国の労働争議は山場を越えたかに見える。中国当局による報道規制も依然あるが、一過性の報道体質で知られる日本のメディアの興味が潮の引くように減退しているからだ。
しかし、中国の労働争議の引き金になった「労働者の権利意識の高まり」は今後もしぼむことはないし、「ネット社会の伝播力」が衰えるとも思えない。
今回の労働争議では日系企業の人事・労務対策が後手に回った感があるが、実は、真価が問われるのは、これからと考えたほうがよい。
中国抜きに成長戦略は描けない
労働争議は東南アジアやインドやバングラデシュなどでも起こっている。
中国が他の国と比べて事情が異なるのは、今や日本企業にとって「中国抜きに成長戦略は描けない」という不即不離の関係にある点だ。
中国に多額の資金を投下して事業展開している日本企業は多い。中国のコスト上昇や労働争議への対応が大変だからといって一部をベトナムやインドに移すところも出たが、完全撤退すれば、製造拠点としても販売市場としても巨大な中国への再帰は難しい。
「労働争議で生産がストップするたびに、あるいは賃上げ交渉でコストが上昇するたびに、フィリピンと中国との間を頻繁にさ迷ったユニデンのケースのように、結局は1円でも安い生産地を求めて今後も「流浪の旅」に出ることになる。
何か起きるたびに他の新興国や後続国へ拠点を移す企業は「放浪癖」の烙印を押されることになる。
いま、日本企業の中国経営戦略は曲がり角にきている。