なぜ参院自民党は揉めているのか 会長による幹事長"更迭劇"の舞台裏

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溝手顕正・自民党参院議員会長もこの案には反対だった。ただそれには個人的な理由もあった。会長(溝手氏=岸田派)と幹事長(脇氏=額賀派)は参院自民党内でナンバーワンとナンバーツーの関係だ。2人の息があってこそ、組織の運営がうまくいく。ところが溝手氏と脇氏の相性が悪かった。参院自民党関係者はこう話す。

「選挙制度改正について、そもそも脇氏は溝手氏に相談していなかった。他の派閥には相談していたようなので、それが溝手氏にはいっそう癪にさわったようだ。そこで溝手氏は脇氏を入閣させ、実質的に参院から追い出そうとした」

そういえば2013年の参院選後に行われた会長選では、当選した溝手氏と対立候補の鴻池祥肇氏はにこやかな笑みをたたえて握手をかわし、新しい結束をアピールしていたものの、同じく側にいた脇氏と溝手氏との間には、妙なよそよそしさが感じられた。前述の関係者はこうも述べる。

特別総会で脇氏を更迭

「そもそも溝手会長・脇幹事長という布陣は、中曽根弘文前会長時代の溝手幹事長・脇国対委員長をそのまま順送りさせたもの。あくまで派閥の力関係上の組み合わせで、2人の間に信頼関係があったわけではない」。不協和音は最初から見えていたわけだ。

「まるく収まったよ」。9月12日、緊急の特別総会で脇氏を更迭した後、自室へ戻る途中、溝手氏は同じエレベーターに居合わせた人に対し、満足そうにこう話している。

確かに、特別総会では大きな波風はたたなかったようだ。脇氏に近い西田昌司氏が地元紙に、「私を選挙制度協議会自民党代表に指名したのは脇氏。脇氏が更迭されるなら代表にとどまらず、副幹事長も辞める」と述べたくらいで、総会自体は約20分で処理された。脇氏の後任には伊達忠一参院国対委員長(町村派)が昇格した。

だが他の人事については何も決められなかった。事前情報では、伊達氏の後任の国対委員長には、幹事長を更迭された脇氏と同じ額賀派の吉田博美氏が就任することになっていた。山谷氏の入閣にともない空席となった政審会長には岸田派から選任されると囁かれていたが、いずれも持ち越された。その理由を参院自民党の議員秘書はこう述べている。

「たいした騒ぎにならなかったのは、国対委員長以下のポストの指名が翌週に持ち越されたためだ。常任委員長ポストも来週あたりで決まるだろう。みんないいポストがほしいから、騒ぎを起こして干されたくない。だから総会では、おとなしくしていたにすぎない」。これが自民党流の人心掌握術である。

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