「もし息子がいじめられたら」児童精神科医の答え いじめっ子は「何らかのストレス」を抱えている

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もしもいじめられているのがわたしの子なら先生に「Aくんに目をかけてください」と頼みます。Aくん親子とは仲良くなるよう努力します。子どもの暴力事件が年々増加している背景には親子関係のストレスがあります。

校内暴力の件数の増加が問題になっています。小学校、中学校、高校、いずれも増加の傾向をたどっていますが、とくに小学校低学年の暴力が増えていることが特徴なのだそうです(※編集部注・2007年ごろの状況。2013年以降、中学・高校は減少傾向)。

友達に暴力をふるう、友達をいじめるという事件が起こると、先生の指導力だとか、子ども同士の人間関係が取り沙汰されます。しかし、最も重要なことは親子関係です。

あえて言わせていただきますが、いじめっ子はほぼ例外なく、親子関係になんらかのストレスを抱えています。親が虐待しているとまではいかなくても、家族内の人間関係がうまくいっていないのです。だから学校という場でも健全な人間関係をつくることができずにいるのです。

しかし、他人の家庭の問題に足を踏み入れることは非常に難しいうえに、いじめっ子の親自身も十分な愛情を注がれずに育っている場合が少なくありません。だからこそいじめ問題は根深いのです。わたしはいじめ問題の専門家ではありませんから、「わたしの子がいじめられていたら、わたしならどうするか」という前提でお話ししたいと思います。

まずは担任の先生に相談を

まずは担任の先生に相談をします。いじめっ子をこらしめるためではなく、安定させるために、です。

わたしなら、わが子が転校したい(あるいは転校させたほうがいいと親が思う)なら、転校させます。逃げる・逃げないではなく、子どもにとってよい環境を探すことは非常に大事なことだからです。もしも子どもが「転校はイヤだ」とかたくなに言うのであれば、必要に応じて学校を休ませつつ、学校の先生と話し合いをします。

まずは担任の先生に、「Aくんに十分に目をかけてあげてください」とお願いします。この子はこれまでにも、さんざんしかられていることでしょう。親からはなぐられているのです。この子にいま必要なのは、精神の安定です。善意や好意や愛情です。それを担任の先生に注いでもらえるようお願いします。たとえば彼に用事を頼み、「力持ちだから助かるよ」などと、ほめる場面を多くつくってもらいます。

「なぜいじめっ子にやさしくしなくちゃいけないの?」と思われるかもしれませんが、いじめている子が不安定でストレスがたまっているうちは、問題は解決しないからです。幼児教育の現場では、友達に乱暴する子がいたら、真っ先に乱暴した子を抱きしめてあげるというやり方が効果を上げています。園内の暴力が減っていくことが実証されているのです。

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