「もし息子がいじめられたら」児童精神科医の答え いじめっ子は「何らかのストレス」を抱えている

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また、いじめはクラス全体の問題なので、保護者会で議題にしてもらいます。教室内にいじめがあることを知らない保護者もいますから、事実を共有し、各家庭でわが子に対して「友達に暴力をふるうのはいけない」「身体的な特徴をからかってはいけない」と伝えてもらえるようにお願いします。

状況を見ながらですが、学校の先生からAくんの親に「なぐってでも蹴ってでもしつける」という方法をやめてもらうようお願いします。このしかり方は決定的にまちがえています。暴力の連鎖を生むだけです。ただ、先生とAくんの親の間に信頼関係がないと「おまえのせいでわたしが恥をかいた」とAくんがしかられる可能性があるので、十分な配慮が必要です。

ストレートに聞くのは控える

家庭では、わが子の話を気のすむまで聞いてあげたいと思います。とはいえ、「今日、どうだった?」とストレートに聞くのは控えます。

学校から帰ってきたら、おやつを用意して、いっしょに食べながらおしゃべりをするのです。そのときに、子どものほうから学校でのことを話してきたら聞いてあげます。「聞き出す」のではなく、子どもが本音を言える状況をつくるということです。言わなければ、無理に聞き出すことはしません。

子どもが自分から話すようになるためにも、このような問題が起こる前から、子どもが話しかけてきたときには少しだけでも手を止めて聞く、子どもの意見を頭ごなしに否定しない、という習慣をつけておくといいですね。

そして、わたしだったらAくんに「家に遊びにおいで」と声をかけると思います。彼と自分の子を連れて、休日に遊園地やサッカーの試合を見に行くこともすると思います。もちろん、しかったりすることはしません。できるならAくんの親御さんもいっしょに行きたいと思います。親同士のいい人間関係をつくることが、遠回りでもわが子にとっていい効果をもたらすことになるからです。

親にできることは小さなことです。けれど、Aくん(と親)の精神が安定すれば、ゆっくりであっても事態は解決の方向に向かうと信じて、わたしなら動いていくでしょう。

これは理想論でしょうか。確かにここに書いたこと、すべてできるかどうかはわかりません。でも、できることから一歩ずつ進めていきたいと、わたしは思うのです。

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