「もし息子がいじめられたら」児童精神科医の答え いじめっ子は「何らかのストレス」を抱えている

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これから思春期に入ると、それがもっともっと重要になってきます。家庭にくつろぎの場がないと、外で「くつろぎ」を求め、友達の家を泊まり歩いたり、非行に走ったりする子もいます。非行に走る勇気のない子は、不登校になったり引きこもったりすることも少なくありません。

健全な人間関係の土台は親子関係です。親に思いっきり甘えて依存して、その安心感を持ち運ぶようにして子どもは外に出ていきます。家庭が本当の意味で依存の場になると、子どもは自立の方向に向かってちゃんと歩いていくのです。

家庭の中で自分の価値を自覚できる

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まずはお兄ちゃんに「今日は何が食べたい? あなたが食べたいもの、作ってあげるよ」と言ってあげてください。ほかのきょうだいがいてもいいですよ。そっと小声で言ってあげるんです。すぐに準備できないものなら、「今日は無理だけど、明日か明後日、買い物してくるから待っててね」と伝え、「ダメよ」と否定はしないでください。

夕ごはんが無理なら朝ごはんでもいいですね。「卵は何がいい? 目玉焼きでもゆで卵でもなんでも好きなものを作ってあげる」と。親に希望を言えれば、弟や妹より少しだけでも大事にされていると思うことができます。家庭の中で自分の価値を自覚できるのです。

それをしばらく続けていったころ、「あれ、弟や妹をたたかなくなったな」と気づくはずです。ぜひ、試してみてください。

佐々木 正美 児童精神科医

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ささき まさみ / Masami Sasaki

1935年群馬県前橋市生まれ。新潟大学医学部医学科に編入学し、1966年同校を卒業。その後、東京大学で精神医学を学び、同愛記念病院に勤務。1970〜1971年にブリティッシュ・コロンビア大学に留学、児童精神医学の臨床訓練を受ける。帰国後は、国立秩父学園、東京大学医学部精神科に勤務後、小児療育相談センター(横浜市)、横浜市南部地域療育センターで児童臨床医として地域ケアに力をそそぐ。川崎医療福祉大学特任教授(岡山県)、ノールカロライナ大学非常勤教授、横浜市総合リハビリテーションセンター参与などを歴任。著書に『子どもへのまなざし』(福音館書店)など多数。2017年没後も、そのメッセージは多くの親たちを励まし続けている。

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