「仕事に集中できる人」「先送りする人」の決定的差 「やる気さえあれば集中できる」という大誤解
新型コロナウイルスのパンデミックが始まった直後の、まだまだ先行きが不透明だったころに、世界中の人がネット上の情報に釘付けになり、いつまでもスマートフォンの画面をスクロールしている時期がありました。
情報を追うことで不安がさらに高まるにもかかわらず、目を離せないこの状態は“Doom Scrolling”「絶望のスクロール」と呼ばれるようになりました。矛盾しているようにみえますが、これは逃れることのできない不安を紛らわせるための行動で、放っておくと際限なく大きくなるストレスを緩和するための自然な反応であることが知られています。
このように、作業の脱線を生み出す心のなかのトリガーは例外なく「痛み」や「不安」から来ています。
ストレスから少しだけ解放されたい、次に何をすればいいのかわからない不安から逃れたい。それならば用事もあったことだし、少しだけメールをチェックしてみよう、1分ほどSNSを見たからといって問題にはならないだろう――そういった心の動きが作業の脱線を生み出しているのです。
やるべき作業になかなか手をつけられず、何度も先送りしてしまう心理も同様の不安や恐怖からきています。
先送りは心が弱く怠惰だから起こるのではない
作家のスティーブン・プレスフィールド氏は、創作の秘密について解説している『The War of Art』で、重要な仕事であればあるほどそれを先送りして回避したくなる気持ちをレジスタンス=心理的抵抗感と名付け、その破壊的な影響について警鐘を鳴らしています。
この心理的抵抗感は、1日の初めに机について仕事を始めようとするときには「まずはメールを見てみたらどうだ」とそそのかし、調子がよいときにも「ちょっとSNSを見るくらいは害がないだろう」と誘惑し、向き合うべき大事な作業を始めようとすれば「こちらの雑用も片付けないといけない仕事だったよね」と方向性を曲げようとする、執拗な敵です。
『The Now Habit』の著者のネイル・フィオーレ氏は、先送りは不確定な未来に対する恐怖やストレスに対する対抗手段として自分たちで生み出す心の防御姿勢であると指摘しています。
先送りは心が弱く、怠惰な人間だから起こるのではなく、Doom Scrolling と同じように、タスクを達成できるかわからない、誰かに批判されるのではないかと不安だ、作業をやってみてあとで無駄になってしまったら嫌だといった、不確実さに対する自然な反応なのです。
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