富士通の優勝旗紛失で問われる不祥事謝罪の流儀 間違ったら謝る、そのうえでの償いが問われる

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経営コンサルタントの立場でわかることを説明すると、組織は必ず組織を生存させることを最優先します。その結果が20年ほど前は金が問題なので謝らないことが主流、現在では評判が問題なので金で解決することが主流だというのが私の説明です。日本という国はなにか寒々しい場所になってきたと思いませんか。

人間でも組織でも、何か間違ったことをしてしまったらまず謝罪をする。そのうえで償いを行う。その償いとは何なのかが今、問われていると思います。

そこで冒頭の富士通の事件が私は気になるのです。金銭では決して償うことができない事件を起こしてしまった会社は、このことにたいしてどのような償いを行うべきなのでしょうか。

それは本当は富士通の関係者がこれから真剣に考えるべきことです。ここからは私見や私自身のアイデアを交えますが、ひとつ可能性を挙げると、富士通らしい償いとしては優勝旗の復元に企業として取り組むことはできるでしょう。

私の会社では富士通のスキャナーを使っていますが、ゆがんだ書類の読み取り画像を平らな書類に戻す技術が優れていて、なかなか便利に感じています。

優勝旗を復元できるか?

優勝旗の復元にあたっては歴代優勝チームのペナントリボンをどう復元するかがポイントになるわけです。各チームが持っている優勝当時のペナントの写真から一本一本のペナントを復元して布に印刷し再現していくのはデジタル先進企業だからできる仕事だと思います。

そうして復元した優勝旗にはICチップを埋め込み、5G技術と富士通の衛星設備を介して居場所がつねに把握できるようにすれば、今後の優勝チームが同じ不祥事を起こすことはなくなるでしょう。

この復元作業、実は結構たいへんです。鐘紡やリッカーミシン、八幡製鉄のように過去の優勝チームの中には会社自体が解散したり、合併で当時の資料が失われている企業チームもあります。一件一件、当時の関係者の自宅をまわってペナントリボンの写真を探し出すのは実に手間のかかる仕事になると思われます。

でも償いとはそういうものだとも私は思うのです。持続的な社会をつくることが企業に求められる時代、過去65年間紡がれてきたたすきを未来につなげていくために、富士通がどのような償いの行動をとるのか、この事件はそこが最大のポイントです。関係者のみなさんには未来を向いて対応を考えていただきたいと思います。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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