富士通の優勝旗紛失で問われる不祥事謝罪の流儀 間違ったら謝る、そのうえでの償いが問われる
一般的には大企業は取り返しのつかない事件を起こした際には富士通のようにはなかなか謝罪しないものです。「訴状が届いていないのでコメントできない」「世間をお騒がせしたことについては責任を感じている」「誤解をまねいたことについて謝罪したい」といった常套句を耳にすることが多いのは、主に法務部ないしは顧問弁護士のアドバイスに従った結果です。
一般に不祥事の際には迅速に事実を発表したうえで謝罪をすることが重要だと危機管理マニュアルには書かれています。事件の際に企業には2つのリスクが存在します。企業としての評判に関わる危機と、賠償金に関するリスクです。前者が問題だと考えれば迅速に謝罪したうえで二度と起きないように対策をとるべきです。
しかし後者の賠償金のリスクを重視する場合、謝罪は弁護士のコントロール下に置かれることが少なくありません。「世間をお騒がせしたことについて謝罪をしているが、事件については裁判で争う」「誤解を与えたことについて謝罪したうえで、真実を主張したい」という形式的な謝罪が行われ、被害者や遺族の反感を買うケースです。
大企業の謝罪の姿勢は変わった
企業事例についてひとつだけ有名なケースを挙げると「空飛ぶタイヤ」で知られる三菱ふそうトラック・バスのリコール隠しがあります。大型トラックのハブに欠陥があったにもかかわらずそれを隠し、2件の死亡事故を引き起こしました。
一連の裁判では有罪ながら経営陣は執行猶予を勝ち取り、民事でも1億6550万円の賠償金請求を550万円の賠償にとどめる結果になりました。ちなみに裁判の長期化もあり被害者の弁護士費用は2000万円以上かかったため賠償金は遺族には届きませんでした。
責任をたいしてとらずに済んだという面では弁護団の全面勝利といっていい事例ですが、みなさんもご存じのとおりこの事件を描いた小説はベストセラーになり、映画化・TVドラマ化され、ブランドは地に堕ちました。
大事件というものはあくまで個別事例でありなかなか一般化は難しいのですが、この事件以降、大企業の謝罪の姿勢が変わったことは事実でしょう。謝罪すべきところは謝り、支払うべき賠償を進んで支払うことで「企業の評判リスクをおさえる」動きが主流になってきたと私は感じます。
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