日本人の健康を守り切る為に求めたい6つの提言 健康危機領域の経済安全保障に必要なことは何か

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新薬開発には治験を経て承認を得るまで10年以上の歳月がかかり、数百億から数千億円規模の研究開発費が必要になる。しかも、その成功確率は年々低下してきている。1つの医薬品が承認されるまでに必要な候補数は20年前に約1.3万だったが、現在は約2万~3万。コロナ危機でも「日本発」として期待を集めながら実用化に至らなかった治療薬やワクチン、検査法の候補は多い。さらに晴れて実用化にこぎ着けても、新薬は特許期間が終了すると後発品に置き換わるため、研究開発の原資を確保できる期間は短い。

政府がワクチンや治療薬を国産したいと方向性を示しても、社会実装への道は険しい。

政官産学の連携の深化

岸田政権の経済安全保障は、健康危機領域の課題にどう取り組んだらいいか。6つ提言したい。

第1に、政・官・産・学が平時から連携を深化すべきである。医薬品については、内閣官房健康・医療戦略室のワクチン開発・生産体制強化戦略、厚労省の医薬品産業ビジョン2021、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局が取りまとめるバイオ戦略など、戦略と司令塔が乱立している。政府は、米欧など同志国と連携し平時から経済安全保障ニーズを明確にして、健康危機領域に焦点をあてた政官産学のワーキンググループを構築すべきだ。

情報と政策を統合する健康危機管理の司令塔

第2に、官邸の指揮下で情報と政策を統合するため、健康危機管理の司令塔を内閣官房に常設すべきである。内閣官房の総合調整権限を用い、健康危機管理の基本方針・重要事項に関する企画立案・総合調整に専従する組織である。

新設する組織には2つのオプションがある。ひとつは「健康危機管理局」。局長は内閣官房副長官(事務)の直下に置き、内閣危機管理監や国家安全保障局長と同格とする。もうひとつは「健康危機管理室」。内閣官房副長官補(内政)の下に置き、コロナ室と同様に室長は次官級だが、コロナのみならず健康危機を幅広く所掌する。有事には補佐官や参与で政府外から専門家を登用できるようにすべきだ。

重要技術・品目のターゲティング

第3に、脅威となりえる健康危機とともに「経済安全保障重要技術・品目」を、平時からターゲティング(特定)すべきだ。Quadは重要技術および物資のサプライチェーンにつきマッピングを進め、厚労省も重点感染症の検討に着手した。さらに、政官産学のワーキンググループにおいて、どのような脅威がリスクで、日本にはどのような技術・品目が重要か、機微な技術情報も共有しながら精緻に分析し、ターゲティングすべきだ。特許非公開化(秘密特許)やセキュリティクリアランスの整備も急務である。

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