「安易にMBA取得」学び活かせぬ人に欠けた視点 学び続けるための改革が今の社会には必要だ

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この話は僕の経験に沿ったものですが、ビジネス的観点から楽しめるという意味では、ほかにもいろんな授業がありました。

例えば吉田寛先生という、デジタルゲームの研究をされてる方がいるんですけど、授業では画面のスクロールについて取り扱うんです。上下、左右のほかに「こっちに向かってくる」タイプのものがありますが、それってもともとアメリカのゲーム会社が発明したそうで、着想元は『インディ・ジョーンズ』。日本のおもちゃメーカーと違って、向こうでは映像系の会社がゲームを作ってるからこそ生まれたアイデアだったんです。

この話から導き出せるのは、スクロールひとつでも、見方を変えれば日本とアメリカにおけるゲーム業界の産業構造の違いもわかるし、ビジネスの視点を持つことにつながるということ。こういう話をすると、単純に面白そうだし、仕事にも役立ちそうだと思いませんか?

ただ、そうは言っても、現実的には、通うのは結構大変です。僕の通ってる文化資源学科は、社会人入学制度はあるとはいえ、授業は普通に朝から行なわれます。プロデューサーという商業柄もあり、時間の融通はききやすいほうですが、それでもタレントさんの取材など、どうしても合わせる必要がある仕事のときは、授業を休むこともあります。

とは言え、今はご時世的にzoomでのリモート講義も多く、社会人学生にはありがたかったですね。勉強の仕方も柔軟になって、車で聞いたり、散歩しながら聞くこともありました。ウォーキングzoomはとくにお気に入りで、歩いているので眠くならないし、歩いて思考するほうが頭も働く。京都に「哲学の道」がある理由がわかりましたよね。そして、なにより健康にもいいです。1コマで1万5000歩歩いたこともありました。 

大事なのは「拡張する」感覚

最初に書いたように、学び直しをしたいと考えている社会人の方も少なくないと思います。でも、自分のキャリアをどう「拡張」するかの感覚がない印象の人も少なくありません。

例えばある時、TBS時代の後輩女性アナウンサーからキャリアの相談を受けたことがあって、彼女は「MBAを取ろうかなって思ってます」と言ったんです。自分という人間をどう武装して、強くしていけば勝てるかを考える……彼女たちには自然な感覚かもしれませんが、僕が「MBAを取ったとして、経営に参画するの? 出世しようと思ってるの?」と尋ねると、彼女は首を横に振りました。詳しく聞いてみると、彼女が本当にやりたいのは『世界ふしぎ発見!』のレポーターのように異文化をリポートすることだったんですが、『持っていれば優秀そうに見えるもの』を取ろうとしていたんです。

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