もともと人に言われたことを何でもやる性格なので、「はい、行きます!」と即答して。小川教授から「普段は遠隔だけど、月イチで東京から来てる人もいますよ」と言われたこともあって、最初は立命館の大学院に行こうと思ってたんです。「月イチ京都」って言葉に超惹かれる気持ち、皆さんにも結構ありませんか?
でも別れ際に、「本当に受けるのなら、『やりたい研究ができるか』『教えてもらいたい先生がいるか』の2つは考えたほうがいいですよ」と言われ、帰りの新幹線で早速調べたんですね。社会人でも受けられるところを探していたら、母校に文化資源学研究専攻なる学科があることに気づきました。
今でもWikipediaにページがないくらい新しい学問なんですけど、HPに書いてあった「多様な観点から文化をとらえ直し、新たな価値を発見・再評価し、それらを活かしたよりよい社会の実現をめざす」という説明を見たとき、自分が今までしてきたことと同じだとピンときて。「文化資源学って僕のための学問なんじゃないの?」「僕がやんなきゃダメでしょ!」くらいに思っちゃったんです。
準備期間は7月から試験のある1月までなので、約半年。試験科目は、英語・専門科目・論文の3科目でした。
大人だからこそわかる面白さ
「大人になると、記憶力が低下してなかなか頭に入っていかない」と言う人もいますけど、大学院に行って僕が思ったのは、「大人だからこそ学べるものがたくさんある」ということでした。
たとえば、石井清純先生の「日本の禅思想」。禅思想の話の中にスティーブ・ジョブズのことを話されるんですが、ジョブズは禅思想の深い影響を受けていたとされていて、先生はより深く、現代のiPhoneデザインと、禅思想の共通点について話してくれたんです。この2つの話題を、先生は同列で話すんですよね。それがもう本当に面白かったんですが、でも、もしその授業を22歳の僕が聞いてたら……と考えると、面白いとは思いつつも、単位とか出欠が気になっていたことでしょう。
と同時に、「この授業を、テレビマンたちに聞かせたいな」という感想を抱いたのも、社会人を経験したからこそでした。
テレビ局には「俺たちインテリで頭がいいけど、視聴者の大半はバカ。だから、番組もバカに合わせてくだらなく、レベルを下げて作らないと数字(視聴率)は取れない」と真剣に思っている人がたくさんいるんです。でも、その禅思想の授業は、一見ハイレベルでとっつきにくいのに、とっても面白くて。高学歴ゆえに視聴者を見下すテレビマンたちに抱いてきた違和感は、間違ってなかったと改めて感じた瞬間でした。当然ですけど、社会経験のない22歳には感じ得ない気持ちですよね。
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